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閲覧履歴

スチバーガ錠40mg

抗悪性腫瘍剤/キナーゼ阻害剤

1錠 5682.6円

添付文書番号

4291029F1028_1_12

企業コード

630004

作成又は改訂年月

2022年12月改訂
(第2版、再審査結果)

日本標準商品分類番号

874291

薬効分類名

抗悪性腫瘍剤/キナーゼ阻害剤

承認等

販売名

スチバーガ錠40mg

販売名コード

4291029F1028

販売名英字表記

Stivarga tablets 40mg

販売名ひらがな

すちばーがじょう40mg

承認番号等

承認番号
22500AMX00886000

販売開始年月

2013年5月

貯法、有効期間

貯法
室温保存
有効期間
30ヵ月

規制区分

劇薬
処方箋医薬品 注1)
注1)注意―医師等の処方箋により使用すること

一般的名称

レゴラフェニブ錠

警告

  1. 本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に本剤の有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
  2. 重篤な肝機能障害があらわれることがあり、劇症肝炎、肝不全により死亡に至る例も報告されているので、本剤投与開始前及び投与中は定期的に肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。

禁忌(次の患者には投与しないこと)

  1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  2. 妊婦又は妊娠している可能性のある女性

組成・性状

組成

スチバーガ錠40mg
有効成分
1錠中レゴラフェニブ  40mg含有
レゴラフェニブ水和物として  41.49mg
添加剤
結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ポビドン、軽質無水ケイ酸、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、大豆レシチン、マクロゴール4000、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、タルク、酸化チタン

製剤の性状

スチバーガ錠40mg
剤形楕円形のフィルムコーティング錠
色調淡赤色
外形
大きさ
大きさ(長径)
16mm
大きさ(短径)
7mm
大きさ(厚さ)
5.6mm
質量472.00mg
識別コード

効能又は効果

  • 治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌
  • がん化学療法後に増悪した消化管間質腫瘍
  • がん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞癌

効能又は効果に関連する注意

〈効能共通〉
  1. 臨床試験の対象となった患者の前治療歴等について、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分理解した上で、適応患者の選択を行うこと。
〈治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌〉
  1. 本剤の一次治療及び二次治療における有効性及び安全性は確立していない。
  2. 本剤の術後補助化学療法における有効性及び安全性は確立していない。
〈がん化学療法後に増悪した消化管間質腫瘍〉
  1. イマチニブ及びスニチニブによる治療後の患者を対象とすること。
  2. 本剤の手術の補助化学療法としての有効性及び安全性は確立していない。
〈がん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞癌〉
  1. 局所療法(経皮的エタノール注入療法、ラジオ波焼灼療法、マイクロ波凝固療法、肝動脈塞栓療法/肝動脈化学塞栓療法、放射線療法等)の適応となる肝細胞癌患者に対する本剤の有効性及び安全性は確立していない。
  2. 本剤の一次治療における有効性及び安全性は確立していない。

用法及び用量

通常、成人にはレゴラフェニブとして1日1回160mgを食後に3週間連日経口投与し、その後1週間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。

用法及び用量に関連する注意

  1. 本剤と他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない。
  2. 空腹時に本剤を投与した場合、食後投与と比較して未変化体のCmax及びAUCの低下が認められることから、空腹時投与を避けること。また、高脂肪食摂取後に本剤を投与した場合、低脂肪食摂取後の投与と比較して活性代謝物のCmax及びAUCの低下が認められることから、本剤は高脂肪食後の投与を避けることが望ましい。
  3. 副作用があらわれた場合は、症状、重症度等に応じて以下の基準を考慮して、本剤を減量、休薬又は中止すること。減量して投与を継続する場合には、40mg(1錠)ずつ減量すること(1日1回80mgを下限とすること)。
     
    • 手足症候群
      皮膚毒性の
      グレード
      発現回数/用量調節及び処置
      グレード1
      本剤の投与を継続し、対症療法を直ちに行う。
      グレード2
      1回目:
      本剤の投与量を40mg(1錠)減量し、対症療法を直ちに行う。改善がみられない場合は、7日間休薬する。休薬によりグレード0~1に軽快した場合、投与を再開する。7日以内に改善がみられない場合は下記参照。
      7日以内に改善がみられない場合又は2回目若しくは3回目:
      グレード0~1に軽快するまで休薬する。本剤の投与を再開する場合、投与量を40mg(1錠)減量する。
      4回目:
      本剤の投与を中止する。
      グレード3
      1回目又は2回目:
      対症療法を直ちに行い、グレード0~1に軽快するまで少なくとも7日間は休薬する。本剤の投与を再開する場合、投与量を40mg(1錠)減量する。
      3回目:
      本剤の投与を中止する。
    • 肝機能検査値異常
      肝機能検査値
      異常の程度
      発現回数/用量調節及び処置
      ALT又はASTが正常基準値上限の5倍以下
      本剤の投与を継続し、検査値が正常基準値上限の3倍未満又は投与前値に回復するまで肝機能検査を頻回に行う。
      ALT又はASTが正常基準値上限の5倍を超過、かつ20倍以下
      1回目:
      検査値が正常基準値上限の3倍未満又は投与前値に回復するまで休薬する。投与を再開する場合、投与量を40mg(1錠)減量し、少なくとも4週間は肝機能検査を頻回に行う。
      2回目:
      本剤の投与を中止する。注1)
      ALT又はASTが正常基準値上限の20倍を超過
      本剤の投与を中止する。注1)
      ALT又はASTが正常基準値上限の3倍を超過、かつビリルビン値が正常基準値上限の2倍を超過
      本剤の投与を中止する。注1)
      ジルベール症候群注2)の患者においてALT又はASTの上昇が発現した場合は、本欄のビリルビン値の基準によらず、上欄で規定するALT又はASTの基準に従う。
      注1)肝機能検査値が正常範囲又は投与前値に回復するまで、肝機能検査を頻回に行う。
      注2)本剤はUGT1A1によるグルクロン酸抱合を阻害するため、ジルベール症候群の患者においては間接型ビリルビンが上昇する可能性がある。
    • 高血圧
      高血圧の
      グレード
      用量調節及び処置
      グレード2
      (無症候性)
      本剤の投与を継続し、降圧剤投与を行う。降圧剤による治療を行ってもコントロールできない場合、本剤の投与量を40mg(1錠)減量する。
      グレード2
      (症候性)
      症状が消失し、血圧がコントロールできるまで休薬し、降圧剤による治療を行う。
      投与再開後、降圧剤による治療を行ってもコントロールできない場合、本剤の投与量を40mg(1錠)減量する。
      グレード3
      症状が消失し、血圧がコントロールできるまで休薬し、降圧剤による治療を行う。本剤の投与を再開する場合、投与量を40mg(1錠)減量する。
      投与再開後、降圧剤による治療を行ってもコントロールできない場合、本剤の投与量をさらに40mg(1錠)減量する。
      グレード4
      本剤の投与を中止する。
    • その他の副作用
      グレード3以上の副作用発現時は、グレード2以下に軽快するまで休薬し、投与量を40mg(1錠)減量し再開する、又は投与の中止を考慮すること。
 
グレードはCommon Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)に準じる。

重要な基本的注意

  1. 手足症候群、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑等の皮膚障害があらわれることがあるので、必要に応じて皮膚科を受診するよう、患者に指導すること。
  2. 劇症肝炎、肝不全、肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、本剤投与開始前及び投与中は、定期的に肝機能検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。
  3. 血圧の上昇が認められることがあるので、本剤投与開始前及び投与中は定期的に血圧測定を行うこと。
  4. 創傷治癒を遅らせる可能性があるので、手術が予定されている場合には、手術の前に本剤の投与を中断すること。手術後の投与再開は、患者の状態に応じて判断すること。
  5. タンパク尿があらわれることがあるので、本剤投与開始前及び投与中は定期的に尿タンパクを観察し、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
  6. 甲状腺機能低下があらわれることがあるので、本剤投与中は定期的に甲状腺機能の検査を実施すること。甲状腺機能低下があらわれた場合には、適切な処置を行うこと。
  7. 血小板減少があらわれることがあるので、本剤投与中は定期的に血液検査を実施するなど観察を十分に行うこと。
  8. 間質性肺疾患があらわれることがあるので、咳嗽、呼吸困難、発熱等の臨床症状を十分に観察すること。

特定の背景を有する患者に関する注意

合併症・既往歴等のある患者

  1. 高血圧症の患者
    高血圧が悪化するおそれがある。
  2. 脳転移のある患者
    脳出血があらわれるおそれがある。
  3. 血栓塞栓症又はその既往歴のある患者
    心筋虚血、心筋梗塞等があらわれるおそれがある。

肝機能障害患者

  1. 重度の肝機能障害のある患者
    重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者は臨床試験で除外されている。

生殖能を有する者

妊娠可能な女性に対しては、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導すること。

妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、投与しないこと。ウサギの胚・胎児毒性試験(0.4mg/kg~1.6mg/kgを器官形成期に経口投与)において、着床後胚死亡及び胎児奇形(内臓及び骨格奇形)の増加が報告されている。

授乳婦

授乳しないことが望ましい。動物実験(ラット、経口投与)で乳汁中へ移行することが報告されている。

小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。動物実験で成長段階の若齢ラットに骨及び歯への影響が報告されている。

高齢者

患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下していることが多い。

相互作用

本剤は主にチトクロームP450(CYP)3A4及びグルクロン酸転移酵素(UGT)1A9により代謝される。本剤の活性代謝物(N-オキサイド体であるM-2及びN-オキサイドアミド体であるM-5)は、乳癌耐性タンパク(BCRP)及びP-糖タンパク(P-gp)の基質であることが示されている。また、定常状態における未変化体、M-2及びM-5の血漿中濃度は、UGT1A1、UGT1A9、BCRP、CYP2C9、CYP2B6、CYP2D6及びCYP3A4を阻害する濃度に達する可能性がある。

併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
CYP3A4誘導薬(リファンピシン等)
本剤単回投与とリファンピシンとの併用により、未変化体のAUC及びCmaxはそれぞれ50%及び20%減少した。M-2のCmaxは1.6倍に増加し、M-5のAUC及びCmaxはそれぞれ3.6倍及び4.2倍に増加したが、M-2のAUCは変化しなかった。
CYP3A4誘導作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮すること。併用が避けられない場合には、患者の状態を慎重に観察すること。
In vitro試験において、本剤はCYP3A4によって代謝され、また、M-2及びM-5の生成にCYP3A4が関与していることが示されている。
CYP3A4阻害薬(ケトコナゾール等)
本剤単回投与とケトコナゾール(経口剤:国内未発売)との併用により、未変化体のAUC及びCmaxはそれぞれ33%及び40%増加した。M-2及びM-5のAUCはそれぞれ94%及び93%減少し、Cmaxはそれぞれ97%及び94%減少した。
CYP3A4阻害作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮すること。併用が避けられない場合には、患者の状態を慎重に観察すること。
In vitro試験において、本剤はCYP3A4によって代謝され、また、M-2及びM-5の生成にCYP3A4が関与していることが示されている。
イリノテカン
イリノテカンとの併用により、イリノテカン及びその活性代謝物であるSN-38のAUCはそれぞれ28%及び44%増加し、Cmaxはそれぞれ22%増加及び9%減少した。
In vitro試験において、本剤はUGT1A1によるグルクロン酸抱合を阻害することが示されている。
BCRPの基質となる薬剤(ロスバスタチン等)
ロスバスタチンとの併用により、ロスバスタチンのAUC及びCmaxはそれぞれ3.8倍及び4.6倍に増加した。
左記薬剤を併用する場合には、患者の状態を慎重に観察すること。
In vitro試験において、本剤はBCRPを阻害することが示されている。

副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

重大な副作用

  1. 手足症候群(50.3%)
    皮膚症状があらわれた場合には対症療法、減量、休薬又は投与の中止を考慮すること。
  2. 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)(頻度不明)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(0.1%)、多形紅斑(0.7%)
  3. 劇症肝炎(頻度不明)、肝不全(0.3%)、肝機能障害(7.7%)、黄疸(0.9%)
    AST、ALTの著しい上昇を伴う肝機能障害、黄疸があらわれ、劇症肝炎、肝不全により死亡に至る例が報告されている。
  4. 出血(8.8%)
    消化管出血(1.8%)、喀血(0.2%)、肺出血(0.2%)、腹腔内出血(0.1%)、腟出血(0.1%)、脳出血(頻度不明)、鼻出血(4.8%)、血尿(0.9%)等の出血があらわれることがある。重篤な出血においては、死亡に至る例が報告されているので、本剤投与中は観察を十分に行い、重篤な出血があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
  5. 間質性肺疾患(頻度不明)
    異常が認められた場合には、胸部X線、胸部CT等の検査を実施すること。間質性肺疾患が疑われた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
  6. 血栓塞栓症
    心筋虚血(0.2%)、心筋梗塞(0.2%)等の血栓塞栓症があらわれることがある。
  7. 高血圧(29.2%)、高血圧クリーゼ(0.2%)
    血圧の上昇が認められることがあるので、必要に応じて降圧剤の投与を行うなど、適切な処置を行うこと。重症、持続性あるいは通常の降圧治療でコントロールできない高血圧があらわれた場合には減量、休薬又は投与を中止すること。
  8. 可逆性後白質脳症(0.1%)
    痙攣、頭痛、錯乱、視覚障害、皮質盲等が認められた場合には投与を中止し、血圧のコントロールを含め、適切な処置を行うこと。
  9. 消化管穿孔(0.1%)、消化管瘻(0.1%)
    死亡に至る例が報告されている。
  10. 血小板減少(9.0%)
  11. 動脈解離(頻度不明)
    大動脈解離を含む動脈解離があらわれることがある。

その他の副作用

10%以上
1~10%未満
1%未満
頻度不明
精神神経系
頭痛、末梢性ニューロパチー、不眠、浮動性めまい、錯感覚
回転性めまい、失声症、傾眠、知覚過敏、振戦
感覚器
味覚異常、耳鳴
耳不快感
消化器
下痢、食欲減退、口内炎、悪心
便秘、嘔吐、口内乾燥、リパーゼ上昇、アミラーゼ上昇、消化不良、口腔内潰瘍形成
腹水、鼓腸、腹部膨満、胃腸炎、嚥下障害、口唇炎、痔核、肛門の炎症、歯周病、膵炎、胃食道逆流
循環器
頻脈、QT延長、動悸
呼吸器
発声障害
呼吸困難、咳嗽
鼻漏、鼻炎
血液
貧血、好中球減少、白血球減少
リンパ球減少、INR上昇
肝臓
高ビリルビン血症、AST上昇、ALT上昇、Al-P上昇、LDH上昇
肝機能異常、γ-GTP上昇
腎臓
タンパク尿、血中クレアチニン上昇
BUN上昇、総タンパク減少、高尿酸血症
筋・骨格系
筋痙縮、関節痛
筋力低下、筋骨格硬直
皮膚
発疹
脱毛、皮膚乾燥、そう痒、紅斑、ざ瘡、皮膚はく脱、過角化
多汗症、じん麻疹、爪の障害、はく脱性発疹、皮膚亀裂、皮膚毒性、皮膚肥厚
その他
疲労、疼痛、無力症、体重減少、粘膜炎
感染、発熱、低リン酸血症、甲状腺機能低下症、浮腫、低カリウム血症、低ナトリウム血症、低アルブミン血症、脱水、低カルシウム血症、倦怠感、低マグネシウム血症
甲状腺機能亢進症、ほてり、全身健康状態低下、悪寒、高トリグリセリド血症、尿潜血
CK上昇

適用上の注意

薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

その他の注意

臨床使用に基づく情報
本剤投与後にケラトアカントーマ、皮膚扁平上皮癌が発生したとの報告がある。
非臨床試験に基づく情報
反復投与毒性試験(ラット及びイヌ)の病理組織学的検査において、精巣(精細管萎縮、成熟遅延、巨細胞)、卵巣(萎縮、のう胞状黄体)、子宮(萎縮)の形態学的変化が認められており、生殖機能及び受胎能に障害を及ぼす可能性が示唆されている。

薬物動態

血中濃度

  1. 単回及び反復投与
    日本人固形がん患者に本剤160mgを1日1回、単回(15例)又は21日間反復投与(12例)した際の血漿中未変化体濃度は、投与約4時間後に明瞭なピークを示し、続いて48時間にわたって二峰性のピークを示しながら推移したことから、本剤の吸収過程において腸肝循環が示唆された。定常状態における未変化体、M-2及びM-5の血漿中濃度のCmaxの蓄積比はそれぞれ2.0、4.8及び36であり、AUC(0-24)の蓄積比はそれぞれ2.1、5.2及び37であった。
    AUC
    (mg・h/L)
    AUC(0-24)
    (mg・h/L)
    Cmax
    (mg/L)
    tmax
    (h)
    t1/2
    (h)
    単回投与
    未変化体
    34.6
    (84.2)
    16.4
    (86.1)
    1.37
    (108)
    4.0
    (1.9-8.1)
    27.4
    (29.9)
    M-2
    7.82
    (301)
    3.70
    (341)
    0.273
    (389)
    4.3
    (2.8-24.0)
    24.8
    (27.7)
    M-5
    3.44
    (112)
    0.380
    (164)
    0.0311
    (167)
    24.0
    (2.8-71.3)
    60.8
    (78.2)
    反復投与
    未変化体
    33.0
    (68.5)
    2.52
    (77.0)
    3.6
    (0.6-47.9)
    30.4
    (26.2)
    M-2
    15.6
    (213)
    1.04
    (214)
    4.3
    (0.6-47.9)
    29.5
    (24.1)
    M-5
    7.12
    (459)
    0.515
    (414)
    35.6
    (0.6-73.2)
    57.5
    (33.7)
    幾何平均値(幾何CV%) ※:tmax:中央値(範囲)
    外国人固形がん患者に本剤120~220mg注1)投与時の定常状態における未変化体のAUC(0-24)は用量に伴い増加したが、その増加は用量比を下回るものであった。Cmaxは増量による上昇はみられなかった。
    注1)本剤の承認用量は160mg/日である。

吸収

  1. 食事の影響
    外国人健康男性に本剤160mgを低脂肪食(約319kcal、脂肪含量8.2g)摂取後に単回経口投与したとき、空腹時と比較して、未変化体、M-2及びM-5のAUCはそれぞれ136、140及び123%、Cmaxはそれぞれ154、130及び112%となった。また、高脂肪食(約945kcal、脂肪含量54.6g)摂取後に単回経口投与したとき、空腹時と比較して、未変化体、M-2及びM-5のAUCはそれぞれ148、80及び49%、Cmaxはそれぞれ173、72及び41%となった。

分布

In vitro試験において、未変化体、M-2及びM-5の血漿タンパク結合率は、それぞれ99.5、99.8及び99.95%であった。また、in vitro試験においてM-2及びM-5はBCRP及びP-gpの基質であることが示されている。

代謝

In vitro試験において、本剤は、CYP3A4によって酸化的に代謝され、また、未変化体と同様の薬理活性を有するM-2及びM-5の生成にCYP3A4が関与していることが示されている。さらに、in vitro試験において、本剤はUGT1A9によるグルクロン酸抱合により代謝されることが示されている。

排泄

外国人健康男性4例に[14C]レゴラフェニブ120mgを経口投与した際、投与量の90%が投与後12日以内に排泄され、71%(未変化体47%、代謝物24%)が糞中に、19%がグルクロン酸抱合体として尿中に排泄された。

特定の背景を有する患者

  1. 腎機能障害患者
    軽度の腎機能障害(eGFR 60~89mL/min/1.73m2)のある患者(日本人を含む)に本剤160mgを1日1回、21日間反復投与した際の定常状態における未変化体、M-2及びM-5のAUC及びCmaxは、腎機能が正常な患者と類似していた。eGFR(estimated glomerular filtration rate:推算糸球体ろ過量)はMDRD式により算出した。
    腎機能が正常又は軽度の腎機能障害(クレアチニンクリアランス60mL/min以上)のある患者及び重度の腎機能障害(クレアチニンクリアランス15~29mL/min)のある患者(外国人)に本剤160mgを単回経口投与、又は本剤160mgを1日1回、21日間反復投与した際の定常状態における未変化体、M-2及びM-5の薬物動態パラメータ[幾何平均値(幾何CV%)]は、以下のとおりであった。
    腎機能障害の重症度
    測定対象
    N
    AUC
    (0-tlast)a
    (mg・h/L)
    AUC(0-24)
    (mg・h/L)
    Cmax
    (mg/L)
    単回投与
    正常
    又は
    軽度
    未変化体
    18
    67.2
    (45.5)
    30.0
    (39.8)
    2.45
    (47.0)
    M-2
    18
    27.8
    (80.4)
    13.5
    (70.0)
    1.01
    (66.7)
    M-5
    18
    5.25
    (145)
    1.17
    (116)b
    0.0877
    (125)
    重度
    未変化体
    6
    76.6
    (50.3)
    28.4
    (62.0)
    2.00
    (69.7)
    M-2
    6
    19.0
    (58.7)
    7.93
    (72.7)
    0.525
    (69.6)
    M-5
    6
    2.34
    (79.8)
    0.474
    (101)c
    0.0341
    (67.0)
    反復投与
    正常
    又は
    軽度
    未変化体
    13
    133
    (55.1)
    56.0
    (56.4)
    3.52
    (54.9)
    M-2
    13
    136
    (64.9)
    53.9
    (63.1)
    3.52
    (58.8)
    M-5
    13
    183
    (128)
    49.7
    (130)
    3.25
    (133)
    重度
    未変化体
    4
    111
    (54.8)
    45.2
    (45.8)
    2.87
    (62.2)
    M-2
    4
    92.3
    (280)
    35.0
    (207)
    2.29
    (257)
    M-5
    4
    134
    (459)
    34.2
    (438)
    2.23
    (659)
    a:投与0時間から最終データ取得時までのAUC、b:N=17、c:N=5
    なお、中等度の腎機能障害(eGFR 30~59mL/min/1.73m2)のある患者の成績は限られている。また、末期腎疾患の患者における薬物動態は検討していない。
  2. 肝機能障害患者
    本剤100mg注2)を単回投与した際の臨床成績(外国人)では、軽度及び中等度の肝機能障害(Child-Pugh分類A、Child-Pugh分類B)のある患者の未変化体、M-2及びM-5のAUC及びCmaxは、肝機能が正常な患者と類似していた。重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者の薬物動態は検討していない。
    注2)本剤の承認用量は160mg/日である。

薬物相互作用

  1. 相互作用の機序
    In vitro試験の結果から、本剤160mgを1日1回反復投与した際の定常状態において未変化体はCYP2B6、CYP2C8、CYP2C9及びCYP3A4を、M-2はCYP2C8、CYP2C9、CYP2D6及びCYP3A4を、M-5はCYP2C8を阻害する可能性が示唆された。また、in vitro試験の結果から、本剤160mgを1日1回反復投与した際の定常状態において未変化体及びM-2はUGT1A1及びUGT1A9を介するグルクロン酸抱合を阻害し、M-5はUGT1A1を阻害する可能性が示唆された。さらに、in vitro試験の結果から、本剤160mgを1日1回反復投与した際の定常状態において未変化体はP-gp及びBCRPを阻害する可能性が示唆された。
  2. その他の薬剤
    外国人固形がん患者を対象に本剤併用投与がCYPプローブ基質の薬物動態に及ぼす影響を検討した試験において、本剤併用投与によりロシグリタゾン(CYP2C8基質)、ワルファリン(CYP2C9基質)、及びミダゾラム(CYP3A4基質)のAUCはそれぞれ102、125及び112%、Cmaxはそれぞれ99.1、126及び128%となった。また、オメプラゾール(CYP2C19基質)については、本剤併用投与により投与6時間後の血漿中5-OHオメプラゾール/オメプラゾール濃度比は96.1%となった。
    外国人固形がん患者を対象に本剤併用投与がジゴキシン(P-gp基質)の薬物動態に及ぼす影響を検討した試験において、本剤併用投与によりジゴキシンのAUC(0-24)及びCmaxはそれぞれ105及び112%となった。
    外国人健康男性を対象にフラジオマイシン(経口剤:国内未発売)が本剤の薬物動態に及ぼす影響を検討した試験において、未変化体、M-2及びM-5のAUCはそれぞれ94.3、23.7及び14.1%、Cmaxはそれぞれ96.2、18.4及び19.6%となった。

臨床成績

有効性及び安全性に関する試験

〈治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌〉
  1. 国際共同第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照試験
    フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤、オキサリプラチン注1)、イリノテカン及びベバシズマブ、並びに腫瘍組織におけるKRAS遺伝子が野生型の患者の場合はセツキシマブ又はパニツムマブを含む治療後に増悪した、若しくはこれらの治療法が適応とならない遠隔転移を有する結腸・直腸癌の患者760例(Performance Status:全身状態の指標0又は1、日本人100例を含む)を対象に、至適支持療法の併用下で本剤160mg1日1回食事(総熱量に占める脂肪の割合は30%未満)摂取後に3週間投与+1週間休薬(本剤群)とプラセボ投与(プラセボ群)を比較検討した結果、全生存期間の有意な延長が認められた(CORRECT試験)。
    注1)術後補助化学療法としてオキサリプラチンを投与中又は投与終了後6ヵ月以内に増悪した患者は、遠隔転移後にオキサリプラチンが投与されていなくても対象とした。
    評価項目
    本剤群
    (N=505)
    プラセボ群
    (N=255)
    P値
    (片側検定)
    ハザード比
    全生存期間
    中央値(日)
    (95%信頼区間)
    196
    (178、222)
    151
    (134、177)
    0.005178
    0.774
    (0.636、0.942)
    ※:日本人例数は本剤群67例、プラセボ群33例であった。

    副作用(臨床検査値異常を含む)は500例中(日本人65例を含む)465例(93.0%)に認められた。主な副作用の発現例数(発現率)は、手足症候群225例(45.0%)、下痢169例(33.8%)、食欲減退152例(30.4%)、疲労145例(29.0%)、発声障害142例(28.4%)、高血圧139例(27.8%)、発疹113例(22.6%)等であった。
〈がん化学療法後に増悪した消化管間質腫瘍〉
  1. 国際共同第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照試験
    イマチニブ及びスニチニブによる治療後に増悪した切除不能又は転移性の消化管間質腫瘍患者199例(Performance Status:全身状態の指標0又は1、日本人17例を含む)を対象に、至適支持療法の併用下で本剤160mg1日1回食事(総熱量に占める脂肪の割合は30%未満)摂取後に3週間投与+1週間休薬(本剤群)とプラセボ投与(プラセボ群)を比較検討した結果、無増悪生存期間の有意な延長が認められた(GRID試験)。
    評価項目
    本剤群
    (N=133)
    プラセボ群
    (N=66)
    P値
    (片側検定)
    ハザード比
    無増悪生存期間
    中央値(日)
    (95%信頼区間)
    147
    (122、173)
    28
    (28、32)
    <0.000001
    0.268
    (0.185、0.388)
    ※:日本人例数は本剤群12例、プラセボ群5例であった。

    副作用(臨床検査値異常を含む)は132例中(日本人12例を含む)130例(98.5%)に認められた。主な副作用の発現例数(発現率)は、手足症候群87例(65.9%)、高血圧64例(48.5%)、下痢53例(40.2%)、発声障害44例(33.3%)、疲労39例(29.5%)、発疹38例(28.8%)、脱毛31例(23.5%)、口内炎30例(22.7%)、疼痛29例(22.0%)、食欲減退28例(21.2%)等であった。
〈がん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞癌〉
  1. 国際共同第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照試験
    ソラフェニブによる治療後に増悪した切除不能な肝細胞癌患者注2)573例(Performance Status:全身状態の指標0又は1、日本人40例を含む)を対象に、至適支持療法の併用下で本剤160mg1日1回軽食後に3週間投与+1週間休薬(本剤群)とプラセボ投与(プラセボ群)を比較検討した結果、全生存期間の有意な延長が認められた。なお、ソラフェニブに関連する副作用のためソラフェニブによる治療を中止した患者、又はソラフェニブによる治療において1日1回400mg未満の用量でしか忍容できなかった患者は、本試験から除外された(RESORCE試験)。
    注2)局所療法の適応とならない患者、及び肝機能の状態がChild-Pugh分類Aの患者が対象とされた。
    評価項目
    本剤群
    (N=379)
    プラセボ群
    (N=194)
    P値
    (片側検定)
    ハザード比
    全生存期間
    中央値(日)
    (95%信頼区間)
    323
    (276、369)
    237
    (192、269)
    0.000020
    0.627
    (0.500、0.785)
    ※:日本人例数は本剤群30例、プラセボ群10例であった。

    副作用(臨床検査値異常を含む)は374例中(日本人30例を含む)347例(92.8%)に認められた。主な副作用の発現例数(発現率)は、手足症候群191例(51.1%)、下痢126例(33.7%)、高血圧89例(23.8%)、食欲減退88例(23.5%)、疲労80例(21.4%)等であった。

薬効薬理

作用機序
レゴラフェニブは、腫瘍血管新生(VEGFR1~3、TIE2)、腫瘍微小環境(PDGFR、FGFR)及び腫瘍形成(KIT、RET、RAF-1、BRAF)に関わるキナーゼを阻害する(in vitro)。また、変異型KIT(V560G、V654A、D816H、D820Y及びN822K変異)の活性を阻害する(in vitro)。レゴラフェニブは、腫瘍を移植したマウス又はラットにおいて、腫瘍血管新生を抑制し、腫瘍細胞増殖のシグナル伝達経路を阻害した,,
抗腫瘍効果
レゴラフェニブは、結腸・直腸癌及び消化管間質腫瘍由来腫瘍を移植したマウスにおいて、経口投与で腫瘍増殖を抑制し、また、肝細胞癌由来腫瘍を移植したマウスにおいて、経口投与で生存率を改善した,,,

有効成分に関する理化学的知見

一般的名称
レゴラフェニブ水和物(Regorafenib Hydrate)
化学名
4-[4-({[4-Chloro-3-(trifluoromethyl)phenyl]carbamoyl}amino)-3-fluorophenoxy]-N-methylpyridine-2-carboxamide monohydrate
分子式
C21H15ClF4N4O3・H2O
分子量
500.83
性状
本品は白色~微淡赤色又は微帯褐色の粉末である。
本品はエタノール(99.5)に溶けにくく、水にほとんど溶けない。
化学構造式

包装

28錠[4錠(PTP)×7]

主要文献

1
社内資料: ウサギにおける胚・胎児発生に関する毒性試験(2013年3月25日承認、CTD2.6.6.6.3)
2
社内資料: ラットにおける乳汁中分泌に関する試験(2013年3月25日承認、CTD2.6.4.6.4)
3
NDBを用いた調査結果の概要(VEGF/VEGFR阻害作用を有する薬剤の動脈解離に関するリスク評価): https://www.pmda.go.jp/files/000266521.pdf
4
社内資料: 日本人進行固形がん患者を対象とした国内第Ⅰ相臨床試験(2013年3月25日承認、CTD2.7.6.6)
5
社内資料: 転移性結腸・直腸癌患者を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験(2013年3月25日承認、CTD2.7.6.12)
6
社内資料: 消化管間質腫瘍患者を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験(2013年8月20日承認、CTD2.7.6.1)
7
社内資料: 切除不能な肝細胞癌患者を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験(2017年6月26日承認、CTD2.7.6.4)
8
Wilhelm SM, et al.: Int J Cancer. 2011; 129: 245-255
9
社内資料: キナーゼ阻害に関する試験(2013年3月25日承認、CTD2.6.2.2.1.4)
10
George S, et al.: J Clin Oncol. 2012; 30: 2401-2407
11
社内資料: ヒト結腸癌異種移植モデルにおけるレゴラフェニブ及び代謝物の作用に関する試験(2013年3月25日承認、CTD2.6.2.2.2.6.1)
12
社内資料: 消化管間質腫瘍モデルに対する作用に関する試験(2013年8月20日承認、CTD2.6.2.2.2.1)
13
社内資料: マウス肝細胞癌同所性移植モデルに対する作用に関する試験(2013年3月25日承認、CTD2.6.2.2.2.3)

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