慎重投与
1腎障害のある患者〔精神神経症状等があらわれやすい。(「用法・用量に関連する使用上の注意」、「重要な基本的注意」の項参照)〕
2高齢者〔精神神経症状等があらわれやすい。(「用法・用量に関連する使用上の注意」、「重要な基本的注意」及び「高齢者への投与」の項参照)〕
重要な基本的注意
1各効能・効果に対し設定された用法・用量で投与した場合、本剤投与時のアシクロビル曝露は、アシクロビル経口製剤投与時よりも高いことから、副作用の発現に留意すること(「重要な基本的注意 7.」の項参照)。
2本剤の投与は、発病初期に近いほど効果が期待できるので、早期に投与を開始すること。なお、目安として、帯状疱疹の治療においては皮疹出現後5日以内に、また、水痘の治療においては皮疹出現後2日以内に投与を開始することが望ましい。
3単純疱疹の治療においては、本剤を5日間使用し、改善の兆しが見られないか、あるいは悪化する場合には、他の治療に切り替えること。ただし、初発型性器ヘルペスは重症化する場合があるため、本剤を10日間まで使用可能とする。
4成人の水痘の治療においては本剤を5〜7日間、小児の水痘の治療においては本剤を5日間使用し、改善の兆しが見られないか、あるいは悪化する場合には、他の治療に切り替えること。
5帯状疱疹の治療においては、本剤を7日間使用し、改善の兆しが見られないか、あるいは悪化する場合には、他の治療に切り替えること。
6本剤による性器ヘルペスの再発抑制療法は、性器ヘルペスの発症を繰り返す患者(免疫正常患者においては、おおむね年6回以上の頻度で再発する者)に対して行うこと。また、本剤を1年間投与後、投与継続の必要性について検討することが推奨される。
7本剤の活性代謝物であるアシクロビルの曝露量が増加した場合には、精神神経症状や腎機能障害が発現する危険性が高い。腎障害のある患者又は腎機能が低下している患者、高齢者においては、本剤の投与間隔及び投与量を調節し、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。なお、一般に精神神経症状は本剤の投与中止により回復する。(「用法・用量に関連する使用上の注意」及び「過量投与」の項参照)
8腎障害のある患者又は腎機能が低下している患者、高齢者、水痘患者等の脱水症状をおこしやすいと考えられる患者では、本剤の投与中は適切な水分補給を行うこと(「高齢者への投与」の項参照)。
9水痘の治療において、悪性腫瘍、自己免疫性疾患などの免疫機能の低下した患者に対する有効性及び安全性は確立していない(使用経験がない)。
10水痘の治療における本剤の使用経験は少ないため、本剤を水痘の治療に用いる場合には、治療上の有益性と危険性を勘案して投与すること。
11意識障害等があらわれることがあるので、自動車の運転等、危険を伴う機械の操作に従事する際には注意するよう患者に十分に説明すること。なお、腎機能障害患者では、特に意識障害等があらわれやすいので、患者の状態によっては従事させないよう注意すること。(「用法・用量に関連する使用上の注意」の項参照)
相互作用
併用注意
注1) 特に腎機能低下の可能性がある患者(高齢者等)には慎重に投与すること。
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
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プロベネシド | バラシクロビル製剤の活性代謝物のアシクロビルの排泄が抑制され、アシクロビルの平均血漿中濃度曲線下面積(AUC) が 48%増加するとの報告がある。注1) | プロベネシドは尿細管分泌に関わるOAT1及びMATE1を阻害するため、活性代謝物のアシクロビルの腎排泄が抑制されると考えられる。 |
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シメチジン | バラシクロビル製剤の活性代謝物のアシクロビルの排泄が抑制され、アシクロビルのAUC が27%増加するとの報告がある。注1) | シメチジンは尿細管分泌に関わるOAT1、MATE1及びMATE2-Kを阻害するため、活性代謝物のアシクロビルの腎排泄が抑制されると考えられる。 |
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ミコフェノール酸 モフェチル | バラシクロビル製剤の活性代謝物のアシクロビルとの併用により、アシクロビル及びミコフェノール酸モフェチル代謝物の排泄が抑制され、両方のAUCが増加するとの報告がある。注1) | 活性代謝物のアシクロビルとミコフェノール酸 モフェチル代謝物が尿細管分泌で競合すると考えられる。 |
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テオフィリン | バラシクロビル製剤の活性代謝物のアシクロビルとの併用により、テオフィリンの中毒症状があらわれることがある。 | 機序は不明であるが、バラシクロビル製剤の活性代謝物のアシクロビルがテオフィリンの代謝を阻害するためテオフィリンの血中濃度が上昇することが考えられる。 |
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副作用
副作用等発現状況の概要
本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない。
重大な副作用(頻度不明)
1アナフィラキシーショック、アナフィラキシー(呼吸困難、血管浮腫等)
2汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少、播種性血管内凝固症候群(DIC)、血小板減少性紫斑病
3*急性腎障害、尿細管間質性腎炎
4精神神経症状
意識障害(昏睡)、せん妄、妄想、幻覚、錯乱、痙攣、てんかん発作、麻痺、脳症等
5中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)
6呼吸抑制、無呼吸
7間質性肺炎
8肝炎、肝機能障害、黄疸
9急性膵炎
重大な副作用の注意
以上のような症状がまれにあらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
その他の副作用
過敏症注2)
頻度不明
発疹、蕁麻疹、そう痒、光線過敏症
肝臓
頻度不明
肝機能検査値の上昇
消化器
頻度不明
嘔気、嘔吐、腹部不快感、下痢、腹痛
精神神経系
頻度不明
めまい、頭痛、意識低下
腎臓・泌尿器
頻度不明
腎障害、排尿困難、尿閉
以上のような症状があらわれることがあるので、異常が認められた場合には、減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
注2) このような場合には投与を中止すること。
高齢者への投与
本剤は、活性代謝物のアシクロビルに変換された後、主として腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下していることが多いため高いアシクロビルの血中濃度が持続するおそれがあるので、投与間隔を調節し、患者の状態を観察しながら、慎重に投与すること
(「用法・用量に関連する使用上の注意」、「重要な基本的注意」の項参照)。また、本剤の投与中は適切な水分補給を行うこと。
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
1妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
[活性代謝物のアシクロビルにおいて、動物実験(ラット)の妊娠10日目に、母動物に腎障害のあらわれる大量(200mg/kg/day以上)を皮下投与した実験では、胎児に頭部及び尾の異常が認められたと報告されている。]
2バラシクロビル製剤による性器ヘルペス再発抑制療法中に妊娠し、その後も本療法を続けた場合の安全性は確立していない。
3授乳婦への投与は慎重に行うこと。(バラシクロビル製剤投与後、活性代謝物のアシクロビルがヒト乳汁中へ移行することが報告されている。)
小児等への投与
低出生体重児、新生児又は乳児に対する安全性は確立していない(低出生体重児、新生児に対しては使用経験がなく、乳児に対しては使用経験が少ない)。[動物実験(ラット)でバラシクロビルを経口投与したときの活性代謝物であるアシクロビルの曝露量は、成熟動物に比べて幼若動物で大きいことが報告されている。]
過量投与
徴候、症状:
バラシクロビル製剤の過量投与により、急性腎障害、精神神経症状(錯乱、幻覚、激越、意識低下、昏睡等)が報告されており、嘔気・嘔吐が発現する可能性も考えられる。
なお、これら報告例には、適切な減量投与が行われなかったために過量投与の状態となった腎障害患者又は高齢者における例が多く含まれていた。
処置:
毒性の発現を注意深く観察すること。血液透析により、アシクロビルを血中より除去することができるので、過量投与により症状が発現した場合は、処置の一つとして血液透析を考慮すること。
適用上の注意
服用時:
本剤は主薬の苦みを防ぐため、コーティングを施しているので、錠剤をつぶすことなく服用させること。
本剤を飲みにくい場合には多めの水で1錠ずつ、服用させること。
薬剤交付時:
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている。)
その他の注意
1海外において、バラシクロビル製剤の高用量(8g/日)を用い、重度の免疫不全患者(特に進行性HIV感染症患者)におけるCMV感染症予防に対する臨床試験が実施されている。この試験において、バラシクロビル製剤が長期間にわたり投与された患者で、腎不全、微小血管溶血性貧血及び血小板減少(ときに併発)の発現が認められている。また、これらの症状はバラシクロビル製剤の投与を受けていない同じ基礎疾患、合併症等を有する患者においても発現が認められている。
2Ames試験及びラット骨髄細胞染色体異常試験では陰性であったが、マウス骨髄小核試験では、高用量(経口投与、500mg/kg、アシクロビルのヒト血漿中濃度の26〜51倍相当)において小核出現頻度の軽度増加を認めた。また、マウスリンフォーマ細胞を用いた遺伝子突然変異試験では、代謝活性化系の存在下で1000μg/mL以上の濃度において弱い遺伝毒性(変異コロニー頻度の増加)を示した。