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リュープリンSR注射用キット11.25mg

LH-RH注1)誘導体注1)LH-RH:黄体形成ホルモン放出ホルモンマイクロカプセル型徐放性製剤

1筒 47041円

添付文書番号

2499407G3030_1_08

企業コード

400256

作成又は改訂年月

2023年5月改訂
(第1版)

日本標準商品分類番号

872499

薬効分類名

LH-RH注1)誘導体注1)LH-RH:黄体形成ホルモン放出ホルモンマイクロカプセル型徐放性製剤

承認等

販売名

リュープリンSR注射用キット11.25mg

販売名コード

2499407G3030

販売名英字表記

LEUPLIN SR FOR INJCECTION KITS 11.25mg

販売名ひらがな

りゅーぷりんえすあーるちゅうしゃようきっと11.25mg

承認番号等

承認番号
22700AMX00128

販売開始年月

2002年8月

貯法、有効期間

貯法
室温保存
有効期間
3年

規制区分

劇薬
処方箋医薬品 注1)
注1)注意―医師等の処方箋により使用すること

一般的名称

リュープロレリン酢酸塩

禁忌(次の患者には投与しないこと)

  1. 本剤の成分又は合成LH-RH、LH-RH誘導体に対して、過敏症の既往歴のある患者
  2. 妊婦又は妊娠している可能性のある女性
  3. 授乳中の患者

組成・性状

組成

リュープリンSR注射用キット11.25mg
有効成分
1キット中
リュープロレリン酢酸塩  11.25mg
添加剤
乳酸重合体99.3mg、D-マンニトール19.45mg
液体部(懸濁用液)
D-マンニトール50mg、カルメロースナトリウム5mg及びポリソルベート80 1mg、並びに注射用水をもって1mLとする。

製剤の性状

リュープリンSR注射用キット11.25mg
剤形持続性注射剤[粉末部本体と液体部(懸濁用液1mL)が一体となるキット製品]
pH6.0~7.1注)
浸透圧比約1(生理食塩液に対する比)注)
性状
白色の粉末(粉末部)、無色澄明の液[液体部(懸濁用液)]
注)液体部の全量を移動させ、懸濁した溶液の場合

効能又は効果

  • 前立腺癌
  • 閉経前乳癌
  • 球脊髄性筋萎縮症の進行抑制

効能又は効果に関連する注意

〈閉経前乳癌〉
  1. 本剤の使用開始にあたっては、原則としてホルモン受容体の発現の有無を確認し、ホルモン受容体が陰性と判断された場合には本剤を使用しないこと。
〈球脊髄性筋萎縮症の進行抑制〉
  1. 遺伝子検査により、アンドロゲン受容体遺伝子におけるCAGリピート数の異常延長が確認された患者に投与すること。
  2. 去勢術、薬物療法等により血清テストステロン濃度が去勢レベルに低下している患者では、本剤の効果が期待できないため、投与しないこと。

用法及び用量

通常、成人には12週に1回リュープロレリン酢酸塩として11.25mgを皮下に投与する。
投与に際しては、注射針を上にしてプランジャーロッドを押して、懸濁用液全量を粉末部に移動させて、泡立てないように注意しながら、十分に懸濁して用いる。

用法及び用量に関連する注意

〈前立腺癌、閉経前乳癌〉
  1. 本剤は12週間持続の徐放性製剤であり、12週を超える間隔で投与すると下垂体-性腺系刺激作用により性腺ホルモン濃度が再度上昇し、臨床所見が一過性に悪化するおそれがあるので、12週に1回の用法を遵守すること。
〈球脊髄性筋萎縮症の進行抑制〉
  1. 本剤は12週間持続の徐放性製剤であり、12週を超える間隔で投与すると下垂体-性腺系刺激作用により性腺ホルモン濃度が再度上昇し、疾患が進行するおそれがあるので、12週に1回の用法を遵守すること。

重要な基本的注意

〈効能共通〉
  1. 本剤は12週間持続性の製剤であり、徐放性の薬剤が注射部位に長くとどまり、硬結等の注射部位反応が発現することがあるので、注射部位を毎回変更し、注射部位をもまないように患者に説明するなど十分注意して投与すること。
  2. 本剤は徐放性製剤であるので、最終投与後も薬効持続期間中は患者の状態を観察すること。
  3. アナフィラキシーがあらわれることがあるので、問診を十分に行うこと。
〈前立腺癌〉
  1. 本剤は内分泌療法剤であり、がんに対する薬物療法について十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤による治療が適切と判断される患者についてのみ使用すること。
  2. 初回投与初期に、高活性LH-RH誘導体としての下垂体-性腺系刺激作用による血清テストステロン濃度の上昇に伴って骨疼痛の一過性増悪がみられることがある。また、尿路閉塞あるいは脊髄圧迫のみられるおそれがあるので慎重に投与し、投与開始1ヵ月間は十分観察を行うこと。
〈閉経前乳癌〉
  1. 本剤は内分泌療法剤であり、がんに対する薬物療法について十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤による治療が適切と判断される患者についてのみ使用すること。
  2. 初回投与初期に、高活性LH-RH誘導体としての下垂体-性腺系刺激作用による血清エストロゲン濃度の上昇に伴って骨疼痛の一過性増悪等がみられることがある。
  3. 本剤で抗腫瘍効果が得られず進行を認めた場合は、投与を中止すること。
  4. エストロゲン低下作用に基づく骨塩量の低下がみられることがあるので、長期にわたり投与する場合には、可能な限り骨塩量の検査を行い慎重に投与すること。
〈球脊髄性筋萎縮症の進行抑制〉
  1. 球脊髄性筋萎縮症に関する十分な知識を持つ医師のもとで、本剤による治療が適切と判断される患者についてのみ使用すること。
  2. 初回投与初期に、高活性LH-RH誘導体としての下垂体-性腺系刺激作用による血清テストステロン濃度の上昇に伴って疾患が進行するおそれがあるため、本剤の初回投与初期は症状を十分に観察すること。
  3. 本剤の投与により、血清テストステロン濃度が持続的に去勢レベル以下に低下し、性欲減退、男性性機能不全等の副作用があらわれる可能性があるため、投与に際しては、患者に十分な説明を行うこと。

特定の背景を有する患者に関する注意

合併症・既往歴等のある患者

〈前立腺癌〉
  1. 脊髄圧迫又は尿路閉塞による腎障害を既に呈している患者又は新たに発生するおそれのある患者
    初回投与初期の血清テストステロン濃度の上昇に伴い、原疾患の症状が悪化する可能性がある。
〈閉経前乳癌〉
  1. 粘膜下筋腫のある患者
    出血症状が増悪することがある。

生殖能を有する者

治療に際しては妊娠していないことを確認し、治療期間中は非ホルモン性の避妊をさせること。

妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。LH-RH誘導体による流産の報告があり、本剤の動物試験で胎児死亡の増加及び胎児体重の低値(ラット、ウサギ)並びに骨格異常の増加傾向(ウサギ)がみられている。

授乳婦

投与しないこと。ラットで乳汁への移行がみられている。

副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

重大な副作用

〈効能共通〉
  1. 間質性肺炎(0.1%未満)
    発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常等を伴う間質性肺炎があらわれることがあるので、患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
  2. アナフィラキシー(0.1%未満)
  3. 肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)
    AST、ALTの上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある。
  4. 糖尿病の発症又は増悪(頻度不明)
  5. 下垂体卒中(頻度不明)
    下垂体卒中が下垂体腺腫患者で報告されているので、初回投与直後に頭痛、視力・視野障害等があらわれた場合には、検査のうえ外科的治療等の適切な処置を行うこと。
  6. 心筋梗塞、脳梗塞、静脈血栓症、肺塞栓症等の血栓塞栓症(頻度不明)
〈前立腺癌〉
  1. うつ状態(0.1%未満)
  2. 骨疼痛の一過性増悪、尿路閉塞あるいは脊髄圧迫(5%以上)
    下垂体-性腺系刺激作用による血清テストステロン濃度の上昇に伴って骨疼痛の一過性増悪、尿路閉塞あるいは脊髄圧迫がみられることがある。
  3. 心不全(0.1~5%未満)
〈閉経前乳癌〉
  1. 更年期障害様のうつ状態(0.1~5%未満)
    エストロゲン低下作用に基づく更年期障害様のうつ状態があらわれることがある。
〈球脊髄性筋萎縮症の進行抑制の場合〉
  1. うつ状態(0.1~5%未満)
  2. 心不全(0.1~5%未満)

その他の副作用

〈前立腺癌〉
5%以上
0.1~5%未満
0.1%未満
頻度不明
肝臓
LDH上昇
黄疸、AST、ALT、γ-GTP、AL-Pの上昇
内分泌系
ほてり、熱感
頭痛、不眠、顔面潮紅、めまい、発汗、性欲減退、勃起障害、女性化乳房、睾丸萎縮、会陰部不快感
筋・骨格系
関節痛、骨疼痛、肩・腰・四肢等の疼痛、歩行困難、手指等のこわばり
筋肉痛、骨塩量の低下
皮膚
皮膚炎、頭部発毛
泌尿器系
頻尿、血尿、BUNの上昇
循環器
心電図異常、心胸比増大
血液
貧血、血小板減少
消化器
悪心、嘔吐、食欲不振、便秘
下痢
過敏症
発疹、そう痒
投与部位
硬結
疼痛、発赤
膿瘍、腫脹、潰瘍、そう痒、肉芽腫、腫瘤、熱感、壊死等の注射部位反応
その他
浮腫、胸部圧迫感、悪寒、倦怠感、口唇・四肢のしびれ、体重増加、知覚異常、難聴、耳鳴、発熱、総コレステロール上昇、トリグリセライド上昇、尿酸上昇、高カリウム血症、血糖値上昇
脱力感
痙攣
〈閉経前乳癌〉
5%以上
0.1~5%未満
0.1%未満
頻度不明
低エストロゲン症状
ほてり、熱感、のぼせ、肩こり、頭痛、不眠、めまい、発汗
性欲減退、冷感、視覚障害、情緒不安定
女性生殖器
不正出血、腟乾燥、性交痛、腟炎、帯下増加、卵巣過剰刺激症状、乳房の疼痛・緊満感・萎縮
筋・骨格系
関節痛、骨疼痛等の疼痛
手指等のこわばり、腰痛、筋肉痛、筋痙攣、骨塩量の低下、血清リン上昇、高カルシウム血症
皮膚
ざ瘡、皮膚乾燥、脱毛、多毛、爪の異常
精神神経系
眠気、いらいら感、記憶力低下、注意力低下、知覚異常
過敏症
発疹、そう痒
肝臓
AST、ALT、AL-P、LDH、γ-GTP、ビリルビンの上昇
黄疸
消化器
悪心、嘔吐、食欲不振、腹痛、腹部膨満感、下痢、便秘、口内炎、口渇
循環器
心悸亢進、血圧上昇
血液
赤血球増多、貧血、白血球減少、血小板減少、部分トロンボプラスチン時間延長
泌尿器系
頻尿、排尿困難、BUNの上昇
投与部位
硬結
疼痛、発赤
膿瘍、腫脹、潰瘍、そう痒、肉芽腫、腫瘤、熱感、壊死等の注射部位反応
その他
疲労、倦怠感、脱力感、口唇・四肢のしびれ、手根管症候群、耳鳴、難聴、胸部不快感、浮腫、体重増加、下肢痛、息苦しさ、発熱、総コレステロール上昇、LDLコレステロール上昇、トリグリセライド上昇、高カリウム血症
体重減少、味覚異常、甲状腺機能異常
痙攣
〈球脊髄性筋萎縮症の進行抑制〉
5%以上
0.1~5%未満
頻度不明
肝臓
肝機能異常
内分泌系
ほてり、頭痛、性欲減退
めまい、発汗、不眠、男性性機能不全、勃起障害
筋・骨格系
関節痛、背部痛、筋肉痛
骨粗鬆症、四肢痛、変形性脊椎症、筋骨格痛、筋骨格硬直
投与部位
硬結
内出血、疼痛
膿瘍、腫脹、潰瘍、そう痒、肉芽腫、腫瘤、熱感、壊死等の注射部位反応
その他
便秘、体重増加、高脂血症、高血圧、湿疹
胸痛、頻尿、貧血、感覚鈍麻、倦怠感、トリグリセライド上昇、血清リン上昇、末梢性浮腫、鼻咽頭炎、末梢冷感、呼吸困難、下痢、胃炎、血尿
痙攣

適用上の注意

薬剤調製時の注意
  1. 用時調製し、懸濁後は直ちに使用すること。
薬剤投与時の注意
  1. 皮下注射のみに使用すること。静脈注射により血栓症を誘発するおそれがある。
  2. 皮下注射にあたっては下記の点に注意すること。
    1. 注射部位は上腕部、腹部、臀部の皮下とすること。
    2. 注射部位は毎回変更し、同一部位への反復注射は行わないこと。
    3. 注射針が血管内に入っていないことを確認すること。
    4. 注射部位をもまないように患者に指示すること。

その他の注意

非臨床試験に基づく情報
ラットにリュープロレリン酢酸塩として4週間持続の徐放性製剤0.8、3.6及び16mg/kg/4週を1年間、並びにリュープロレリン酢酸塩水溶液注射剤0.6、1.5及び4mg/kg/日を2年間それぞれ皮下投与した試験で、良性下垂体腺腫が認められたとの報告がある。

薬物動態

血中濃度

  1. 単回投与
    〈前立腺癌〉
    前立腺癌患者(未治療例)に、リュープロレリン酢酸塩として11.25mgを単回皮下投与した場合の血中濃度[代謝物M-I(Tyr-D-Leu-Leu-Arg-Pro-NHC2H5注)を含む]は以下のとおりであった。
    平均値(標準偏差)、n=10
    血中濃度推移(代謝物M-Iを含む)
  2. 反復投与
    〈前立腺癌〉
    前立腺癌既治療患者(リュープリン注射用3.75mgの投与により抗腫瘍効果が安定して得られている患者)51例を対象に、リュープロレリン酢酸塩として11.25mgを12週ごとに2回皮下投与した時の血中濃度(代謝物M-I注)を含む)は、投与24週後までほぼ0.2~0.3ng/mLで推移した。血中濃度の推移からみて蓄積性はないと考えられる。
    〈閉経前乳癌〉
    閉経前乳癌患者(術後患者)に、リュープロレリン酢酸塩として11.25mgを12週ごとに2回皮下投与(タモキシフェンクエン酸塩20mg/日を併用投与)した時の血中濃度(代謝物M-Iを含む)は以下のとおりであり、定常状態に達した投与16週後以降、投与24週後までほぼ0.2ng/mLで推移した。
    平均値(標準偏差)
    血中濃度推移(代謝物M-Iを含む)
    〈球脊髄性筋萎縮症の進行抑制〉
    球脊髄性筋萎縮症患者(32例)にリュープロレリン酢酸塩として11.25mgを12週ごとに皮下投与した時の血中濃度(代謝物M-Iを含む)は、3時間後に最高血中濃度(18.699±3.3050ng/mL)に到達して以降、12週後から48週後までの投与前値は0.153~0.213ng/mLで推移した。

臨床成績

有効性及び安全性に関する試験

〈前立腺癌〉
  1. 前立腺癌患者を対象に、12週に1回、リュープロレリン酢酸塩として11.25mgを皮下投与した国内第Ⅱ相非盲検群間比較試験及び国内第Ⅱ相非対照試験における抗腫瘍効果(奏効率)及び血清テストステロン濃度の去勢レベル維持率は以下のとおりであった。
    抗腫瘍効果(奏効率)及び血清テストステロン濃度の去勢レベル維持率
    対象患者
    投与回数
    投与・観察期間
    抗腫瘍効果(奏効率)注2)
    去勢レベル維持率注3)
    未治療例
    1回
    12週
    100%(10/10例)
    100%(10/10例)
    既治療例注1)
    2回
    24週
    80.4%(41/51例)
    100%(46/46例)
    注1)リュープリン注射用3.75mgの投与により抗腫瘍効果が安定して得られている患者。
    注2)観察期間終了時における「前立腺癌の非観血的治療効果判定基準」による評価。
    奏効率は、未治療例ではCR+PR、既治療例ではS以上の症例の割合を示す(CR : Complete Response、PR : Partial Response、S : Stable)。
    注3)観察期間終了時における血清テストステロン濃度が去勢レベル(100ng/dL)以下の症例の割合を示す。
    副作用の発現頻度は、既治療例を対象とした国内第Ⅱ相非盲検群間比較試験で23.5%(12/51例)であり、主な症状は発汗、ほてり及び注射部位硬結(注射部疼痛性硬結を含む)であった。未治療例を対象とした国内第Ⅱ相非対照試験では副作用はみられなかった。
〈閉経前乳癌〉
  1. 閉経前乳癌患者を対象に、12週に1回、リュープロレリン酢酸塩として11.25mgを皮下投与(タモキシフェンクエン酸塩20mg/日を併用投与)した国内第Ⅱ相非盲検群間比較試験及び国内第Ⅱ相非対照試験における抗腫瘍効果(奏効率)及び血清エストラジオール濃度の閉経期レベル抑制率は以下のとおりであった。
    抗腫瘍効果(奏効率)及び血清エストラジオール濃度の閉経期レベル抑制率
    対象患者
    投与回数
    投与・観察期間
    抗腫瘍効果(奏効率)注1)
    閉経期レベルへの抑制率注2)
    閉経前進行・再発乳癌
    2回
    24週
    22.7%(5/22例)
    閉経前乳癌術後
    2回
    24週
    98.4%(61/62例)
    注1)24週間における「進行・再発乳癌患者における治療効果の判定基準」による評価(Best Response)。
    奏効率は、CR+PRの症例の割合を示す(CR : Complete Response、PR : Partial Response)
    注2)24週時点における血清エストラジオール濃度が閉経期レベル(30pg/mL)未満の症例の割合。
    上記の閉経前乳癌術後患者71例を対象に96週まで投与した試験における無再発生存率は93.5%であった。
    また、外国(欧州)においてリンパ節転移陽性の閉経前及び閉経周辺期乳癌術後患者を対象に、リュープロレリン酢酸塩の投与又はCMF療法を行った海外第Ⅲ相無作為割付群間比較試験における無再発生存率は以下のとおりであった。
    無再発生存率
    投与薬剤
    用法用量
    投与開始2年後の無再発生存率(主要評価項目)
    投与開始5年後の無再発生存率(副次評価項目)
    リュープロレリン酢酸塩11.25mg
    3ヵ月に1回皮下投与・24ヵ月間投与
    83.0%
    (224/270例)
    60.5%
    (153/253例)
    CMF療法
    シクロホスファミド500mg/m2
    メトトレキサート40mg/m2
    フルオロウラシル600mg/m2
    各薬剤を1ヵ月毎に2回(1日目及び8日目)静脈内投与することを1サイクルとし、6サイクル(6ヵ月間)投与
    80.9%
    (207/256例)
    60.6%
    (146/241例)
    副作用の発現頻度は、ホルモン動態及び安全性に関する国内第Ⅱ相非盲検群間比較試験では95.8%(68/71例)であり、主な症状は熱感、頭重(感)、頭痛、発汗及び腰痛であった。国内第Ⅱ相非対照試験では100%(22/22例)であり、主な症状は熱感、頭重(感)、発汗、悪心、注射部位硬結、注射部位疼痛であった。海外第Ⅲ相無作為割付群間比較試験では95.2%(280/294例)であり、主な症状はほてり、体重増加、多汗であった。
〈球脊髄性筋萎縮症の進行抑制〉
  1. 国内第Ⅲ相臨床試験(医師主導二重盲検比較試験)
    遺伝子検査にて診断が確定した球脊髄性筋萎縮症患者を対象に、リュープロレリン酢酸塩として11.25mgを12週に1回、48週間皮下投与したプラセボ対照の医師主導二重盲検群間比較試験において、主要評価項目である咽頭部バリウム残留率の変化量は以下のとおりであった。解析1では群間差は有意だったが(2標本t検定:p=0.049)、本解析のみベースライン値の分布に群間で偏りがみられたため調整解析した結果、群間差は有意でなかった。解析2では群間差は有意でなく(2標本t検定:p=0.331)、解析3(開封後の追加解析)では群間差は有意であった(2標本t検定:p=0.063),
    咽頭部バリウム残留率変化量注1)
    解析
    投与群
    N
    平均値(90%信頼区間)
    群間差(90%信頼区間)
    解析1注2,3)
    リュープロレリン酢酸塩11.25mg
    97
    -1.55%
    (-3.73%~0.64%)
    -3.21%
    (-5.89%~-0.52%)
    プラセボ
    96
    1.66%
    (0.08%~3.24%)
    解析2注2,4)
    リュープロレリン酢酸塩11.25mg
    79
    -1.01%
    (-2.69%~0.66%)
    -1.27%
    (-3.41%~0.88%)
    プラセボ
    77
    0.25%
    (-1.11%~1.61%)
    解析3注2,5)
    リュープロレリン酢酸塩11.25mg
    98
    -5.08%
    (-8.59%~-1.56%)
    -5.26%
    (-9.92%~-0.60%)
    プラセボ
    96
    0.18%
    (-2.90%~3.26%)
    注1)投与終了時(投与開始48週後又は中止時)における投与開始時からの平均変化量
    注2)試験計画時の検証的主解析は解析3だったが、試験途中で主解析が解析1、及び解析2(検証対象)に変更された。解析3は開封後に探索的解析として実施。(有意水準:両側10%)
    注3)複数回の嚥下を考慮した一連の嚥下後の咽頭部バリウム残留率による解析(調整解析前)
    注4)初回嚥下後の咽頭部バリウム残留率が50%以上の被験者を除いた解析
    注5)初回嚥下後の咽頭部バリウム残留率が50%以上の被験者を含む解析
    副作用発現頻度は、57.0%(57/100例)であり、主な副作用は、ほてり10%(10/100例)、頭痛、関節痛及び注射部位硬結が各7.0%(7/100例)、肝機能異常6.0%(6/100例)並びに背部痛、便秘及び血中トリグリセリド増加が各5.0%(5/100例)であった。

薬効薬理

作用機序
高用量のLH-RH又は高活性LH-RH誘導体であるリュープロレリン酢酸塩を反復投与すると、初回投与直後一過性に下垂体-性腺系刺激作用(急性作用)がみられた後、下垂体においては性腺刺激ホルモンの産生・放出が低下する。更に、精巣及び卵巣の性腺刺激ホルモンに対する反応性が低下し、テストステロン及びエストラジオール産生能が低下する(慢性作用)。リュープロレリン酢酸塩のLH放出活性はLH-RHの約100倍であり、その下垂体-性腺機能抑制作用はLH-RHより強い。リュープロレリン酢酸塩が高活性LH-RH誘導体であり、下垂体-性腺機能抑制作用が強い理由は、リュープロレリン酢酸塩が、LH-RHと比較して蛋白分解酵素に対する抵抗性が高いこと、LH-RHリセプターに対する親和性が高いことなどによる。更に、本剤は徐放性製剤であるので、常時血中にリュープロレリン酢酸塩を放出して効果的に精巣及び卵巣の反応性低下をもたらし、下垂体-性腺機能抑制作用を示す,,,
性腺ホルモン濃度抑制作用
  1. 前立腺癌患者及び球脊髄性筋萎縮症患者において12週に1回の皮下投与により血清テストステロン濃度が持続的に去勢レベル以下に低下し、薬物的去勢作用が認められる。
  2. 閉経前乳癌患者において12週に1回の皮下投与により血清エストラジオール濃度は概ね閉経期レベル以下に低下し、卵巣機能抑制作用を認め、通常排卵は抑制され、月経は停止する。
球脊髄性筋萎縮症モデルマウスにおける薬理作用
変異アンドロゲン受容体を発現させた球脊髄性筋萎縮症モデルマウスにおいて、変異アンドロゲン受容体の核内への蓄積の低下、筋力低下の抑制が認められた。

有効成分に関する理化学的知見

一般的名称
リュープロレリン酢酸塩(Leuprorelin Acetate)〔JAN〕
化学名
5-Oxo-L-prolyl-L-histidyl-L-tryptophyl-L-seryl-L-tyrosyl-D-leucyl-L-leucyl-L-arginyl-N-ethyl-L-prolinamide monoacetate
分子式
C59H84N16O12・C2H4O2
分子量
1269.45
性状
リュープロレリン酢酸塩は白色~帯黄白色の粉末である。水又は酢酸(100)に極めて溶けやすく、メタノールに溶けやすく、エタノール(99.5)にやや溶けにくい。吸湿性である。
化学構造式

承認条件

  1. 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
〈球脊髄性筋萎縮症の進行抑制〉
  1. 国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象とした使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。

包装

1キット

主要文献

1
大島洋次郎, 他. 薬理と治療. 1990;18(Suppl.3):589-607,609-623,625-631,633-639.
2
茶谷文雄, 他. 薬理と治療. 1990;18(Suppl.3):575-588.
3
リュープリン酢酸塩の臨床試験成績(2017年8月25日承認、CTD 2.7.6.1)
4
Katsuno M, et al. Lancet Neurol. 2010;9(9):875-884.
5
須藤勝一, 他. 薬理と治療. 1990;18(Suppl.3):515-520.
6
前多敬一郎, 他. 薬理と治療. 1990;18:2615-2629.
7
山崎巌, 他. 武田研究所報. 1977;36:64-70.
8
須藤勝一, 他. 薬理と治療. 1990;18(Suppl.3):521-528.
9
Katsuno M, et al. Nat Med. 2003;9(6):768-773.

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