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閲覧履歴

ボトックス注用50単位

1瓶 34408円

添付文書番号

1229404D1020_1_13

企業コード

340278

作成又は改訂年月

2022年11月改訂
(第2版)

日本標準商品分類番号

871229

承認等

販売名

ボトックス注用50単位

販売名コード

1229404D1020

販売名英字表記

BOTOX for injection

販売名ひらがな

ぼとっくすちゅうよう50たんい

承認番号等

承認番号
22100AMX00488

販売開始年月

2009年2月

貯法、有効期間

貯法
5℃以下で保存
有効期間
3年

規制区分

毒薬
処方箋医薬品 注1)
注1)注意―医師等の処方箋により使用すること
生物由来製品

販売名

ボトックス注用100単位

販売名コード

1229404D2026

販売名英字表記

BOTOX for injection

販売名ひらがな

ぼとっくすちゅうよう100たんい

承認番号等

承認番号
22100AMX00489

販売開始年月

1997年4月

貯法、有効期間

貯法
5℃以下で保存
有効期間
3年

規制区分

毒薬
処方箋医薬品 注2)
注2)注意―医師等の処方箋により使用すること
生物由来製品

一般的名称

A型ボツリヌス毒素

警告

〈効能共通〉
  1. 本剤の有効成分は、ボツリヌス菌によって産生されるA型ボツリヌス毒素であるため、使用上の注意を熟読した上で、用法及び用量を厳守し、眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、痙性斜頸、上肢痙縮、下肢痙縮、2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足、重度の原発性腋窩多汗症、斜視、痙攣性発声障害、過活動膀胱、神経因性膀胱以外には使用しないこと。ミオクローヌス性ジストニーの患者で、本剤による治療中に因果関係を否定できない死亡例の報告がある。
〈眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、重度の原発性腋窩多汗症〉
  1. 講習を受けた医師で、本剤の安全性及び有効性を十分理解し、本剤の施注手技に関する十分な知識・経験のある医師が投与を行うこと。
〈痙性斜頸、上肢痙縮、下肢痙縮、2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足、斜視、痙攣性発声障害〉
  1. 講習を受けた医師で、本剤の安全性及び有効性を十分理解し、高度な解剖学的知識、筋電図測定技術及び本剤の施注手技に関する十分な知識・経験のある医師が投与を行うこと。
    本剤による治療中に因果関係を完全に否定できない死亡例の報告がある。痙性斜頸、上肢痙縮、痙攣性発声障害患者では、特に呼吸障害、嚥下障害等頸部関連筋に関する副作用があらわれるおそれがある。
〈過活動膀胱、神経因性膀胱〉
  1. 講習を受けた医師で、本剤の安全性及び有効性を十分理解し、高度な解剖学的知識、膀胱鏡を用いた本剤の施注手技に関する十分な知識・経験のある医師が投与を行うこと。
〈痙性斜頸、痙攣性発声障害〉
  1. 頸部関連筋への投与により、呼吸困難があらわれることがある。嚥下障害から嚥下性肺炎を引き起こし、また、投与部近位への拡散により呼吸機能低下に至ったとする報告がある。
〈眼瞼痙攣〉
  1. 1回投与量として100単位を投与し、投与筋以外の遠隔筋に対する影響と考えられる呼吸困難及び筋無力症が発現したという報告がある。
〈神経因性膀胱〉
  1. 自律神経異常反射を来しやすい背景を有する患者には、緊急時に十分対応できる医療施設において、全身麻酔や血圧モニタリングを実施できる環境の下、本剤を投与すること。

禁忌(次の患者には投与しないこと)

〈効能共通〉
  1. 全身性の神経筋接合部の障害をもつ患者(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、筋萎縮性側索硬化症等)[本剤は筋弛緩作用を有するため、病態を悪化させる可能性がある。]
  2. 妊婦又は妊娠している可能性のある女性及び授乳婦
  3. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
〈痙性斜頸〉
  1. 高度の呼吸機能障害のある患者[本剤の投与により、病態を悪化させる可能性がある。]
〈過活動膀胱、神経因性膀胱〉
  1. 尿路感染症を有する患者及び導尿を日常的に実施していない尿閉を有する患者[本剤の投与により、病態を悪化させる可能性がある。]

組成・性状

組成

ボトックス注用50単位
有効成分注1)
1バイアル中
A型ボツリヌス毒素50単位注2)
添加剤
塩化ナトリウム 0.45mg
人血清アルブミン 0.25mg
ボトックス注用100単位
有効成分注1)
1バイアル中
A型ボツリヌス毒素100単位注2)
添加剤
塩化ナトリウム 0.9mg
人血清アルブミン 0.5mg
注1)A型ボツリヌス菌によって産生される。製造工程において、ウシ(心臓、血液、乳、骨格筋、膵臓)、ヒツジ(血液)及びブタ(血液、膵臓、胃、皮膚)由来成分を使用している。
注2)1単位はマウス腹腔内投与LD50

製剤の性状

ボトックス注用50単位
剤形・性状
白色の乾燥注射剤で、生理食塩液に溶解したとき、無色~微黄色澄明の液
pH
本剤を生理食塩液1.4mLで溶解した場合、生理食塩液のpH±0.5以内
浸透圧比
(生理食塩液に対する比)
本剤を生理食塩液2.0mLで溶解した場合、0.95~1.10
ボトックス注用100単位
剤形・性状
白色の乾燥注射剤で、生理食塩液に溶解したとき、無色~微黄色澄明の液
pH
本剤を生理食塩液2.8mLで溶解した場合、生理食塩液のpH±0.5以内
浸透圧比
(生理食塩液に対する比)
本剤を生理食塩液4.0mLで溶解した場合、0.95~1.10

効能又は効果

○眼瞼痙攣、○片側顔面痙攣、○痙性斜頸、○上肢痙縮、○下肢痙縮、○2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足、○重度の原発性腋窩多汗症、○斜視、○痙攣性発声障害、○既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁、○既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない神経因性膀胱による尿失禁

効能又は効果に関連する注意

〈上肢痙縮、下肢痙縮、2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足〉
  1. 本剤は理学療法、作業療法等の標準的治療の代替とはならないため、これらの治療と併用して使用すること。
  2. 本剤は非可逆的拘縮状態となった関節の可動域の改善に対しては効果を有しない。
  3. 痙縮の原因となる疾患の診断及び治療を併せて行うこと。
〈重度の原発性腋窩多汗症、痙攣性発声障害〉
  1. 診断及び本剤による治療は、国内外のガイドライン,等の情報を参考にして慎重に行うこと。
〈斜視〉
  1. 陳旧性の麻痺性斜視の改善に対しては効果を有しない(外科的手術の施行時に拮抗筋の拘縮を緩和する場合を除く)。
  2. 50プリズムジオプトリーを超える斜視、拘束型斜視、外直筋の弱化を伴うデュアン症候群、過去の後転術による過矯正から生じた二次性斜視に対する安全性及び有効性は確立されていないことから、これらの患者に本剤を使用する場合には、その必要性を慎重に検討すること。
〈過活動膀胱〉
  1. 以下に示す患者に本剤の投与を考慮すること。
    • 抗コリン薬又はβ3アドレナリン受容体作動薬による薬物療法及び行動療法を行っても、効果不十分な患者
    • 抗コリン薬又はβ3アドレナリン受容体作動薬の投与が副作用の発現により困難な患者
    • 抗コリン薬又はβ3アドレナリン受容体作動薬の投与が禁忌とされる患者
  2. 下部尿路閉塞疾患(前立腺肥大症等)を合併している患者では、下部尿路閉塞(前立腺の肥大等)の消失等、改善が十分に得られていることが確認されてもなお、過活動膀胱の症状が改善しない場合に、本剤の投与を考慮すること。
〈神経因性膀胱〉
  1. 以下に示す患者に本剤の投与を考慮すること。
    • 抗コリン薬による薬物療法及び行動療法を行っても、効果不十分な患者
    • 抗コリン薬の投与が副作用の発現により困難な患者
    • 抗コリン薬の投与が禁忌とされる患者
  2. 下部尿路閉塞疾患(前立腺肥大症等)を合併している患者では、下部尿路閉塞疾患に対する治療を優先すること。また、投与前の残尿量にも注意し、本剤投与の可否を慎重に判断すること。

用法及び用量

〈眼瞼痙攣〉
通常、成人にはA型ボツリヌス毒素として初回1.25~2.5単位/部位を、1眼当たり眼輪筋6部位の筋肉内に注射する。また、眼輪筋切除術施行後の患者に投与する場合には、筋電計を用いて注意深く目標とする部位を同定すること。効果は通常3~4ヵ月間持続するが、症状再発の場合には再投与する。ただし、投与間隔は8週以上とすること。また、再投与は初回投与量の2倍までの用量を用いることができるが、本剤の薬理作用である筋麻痺作用が予想以上に強く発現した結果と見られる閉瞼不全、眼瞼下垂等の副作用が現れた場合には、再投与時の用量を適宜減量すること。
また、1ヵ月間に累積で45単位を超える投与は避けること。
〈注射部位〉
〈片側顔面痙攣〉
通常、成人にはA型ボツリヌス毒素として以下の用量を痙攣筋に筋肉内注射する。痙攣筋が複数ある場合は、分割して投与する。
  • 初回投与の場合には合計で10単位を投与する。
  • 初回投与後4週間観察し、効果が不十分な場合には、さらに追加で合計20単位を上限として投与することができる。
  • 症状再発の場合には、合計で30単位を上限として再投与することができる。ただし、投与間隔は8週以上とすること。
    ※痙攣筋:眼輪筋、皺眉筋、前頭筋、口輪筋、大頬骨筋、小頬骨筋、笑筋、広頸筋、オトガイ筋等
〈痙性斜頸〉
通常、成人にはA型ボツリヌス毒素として以下の用量を緊張筋に筋肉内注射する。緊張筋が複数ある場合は、分割して投与する。
  • 初回投与の場合には合計で30~60単位を投与する。
  • 初回投与後4週間観察し、効果が不十分な場合には、さらに追加で合計180単位を上限として投与することができる。
  • 症状再発の場合には、合計で240単位を上限として再投与することができる。ただし、投与間隔は8週以上とすること。
    ※緊張筋:胸鎖乳突筋、僧帽筋、板状筋、斜角筋、僧帽筋前縁、肩甲挙筋、傍脊柱筋、広頸筋等
〈上肢痙縮〉
通常、成人にはA型ボツリヌス毒素として複数の緊張筋に合計400単位を分割して筋肉内注射する。1回あたりの最大投与量は400単位であるが、対象となる緊張筋の種類や数により、投与量は必要最小限となるよう適宜減量する。また、再投与は前回の効果が減弱した場合に可能であるが、投与間隔は12週以上とすること。
※緊張筋:上腕二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋、橈側手根屈筋、尺側手根屈筋、深指屈筋、浅指屈筋、長母指屈筋、母指内転筋等
〈下肢痙縮〉
通常、成人にはA型ボツリヌス毒素として複数の緊張筋に合計300単位を分割して筋肉内注射する。1回あたりの最大投与量は300単位であるが、対象となる緊張筋の種類や数により、投与量は必要最小限となるよう適宜減量する。また、再投与は前回の効果が減弱した場合に可能であるが、投与間隔は12週以上とすること。
※緊張筋:腓腹筋(内側頭、外側頭)、ヒラメ筋、後脛骨筋等
〈2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足〉
通常、2歳以上の小児にはA型ボツリヌス毒素として4単位/kgを、罹患している腓腹筋の内側頭・外側頭の各々2ヵ所に筋肉内注射する。両下肢に投与する場合は、4単位/kgを両肢に分割して投与する。初回投与以後、効果不十分な場合にはヒラメ筋、後脛骨筋等へ投与することができる。なお、症状に応じて適宜増減することができる。ただし、1回の総投与量は200単位を超えないこととし、再投与は前回の効果が消失した場合に可能であるが、投与間隔は12週以上とすること。
〈重度の原発性腋窩多汗症〉
通常、成人にはA型ボツリヌス毒素として片腋窩あたり50単位を、複数の部位(10~15ヵ所)に1~2cm間隔で皮内投与する。再投与は前回の効果が減弱した場合に可能であるが、投与間隔は16週以上とすること。
〈斜視〉
通常、成人及び12歳以上の小児にはA型ボツリヌス毒素として以下の用量を外眼筋に筋肉内注射する。
  • 初回投与
    (1)上下斜視の場合:上直筋又は下直筋に1.25~2.5単位
    (2)20プリズムジオプトリー未満の水平斜視の場合:内直筋又は外直筋に1.25~2.5単位
    (3)20~50プリズムジオプトリーの水平斜視の場合:内直筋又は外直筋に2.5~5.0単位
    (4)1ヵ月以上持続する外転神経麻痺の場合:内直筋に1.25~2.5単位
  • 初回投与後4週間観察し、効果が不十分な場合には、さらに追加で初回投与量の2倍までの用量を上限として投与することができる。
  • 前回の効果が減弱した場合には、過去に投与された1回投与量の2倍までの用量を上限として再投与することができる。ただし、投与間隔は12週以上とすること。
  • 1回の投与における1つの筋あたりの投与量は10単位を超えないこと。
〈痙攣性発声障害〉
通常、成人にはA型ボツリヌス毒素として以下の用量を内喉頭筋に筋肉内注射する。
  • 内転型痙攣性発声障害
    初回投与:片側の甲状披裂筋に2.5単位を投与する。
    再投与:前回の効果が減弱した場合には、片側又は両側の甲状披裂筋に再投与することができる。ただし、投与間隔は12週以上とすること。なお、症状に応じて投与量を適宜増減することができるが、片側あたり2.5単位を超えないこと。
  • 外転型痙攣性発声障害
    初回投与:片側の後輪状披裂筋に5.0単位を投与する。
    再投与:前回の効果が減弱した場合には、片側の後輪状披裂筋に再投与することができる。ただし、投与間隔は12週以上とすること。なお、症状に応じて投与量を適宜増減することができるが、5.0単位を超えないこと。
〈既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁〉
通常、成人にはA型ボツリヌス毒素として100単位を排尿筋に分割して注射する。再投与は前回の効果が減弱した場合に可能であるが、投与間隔は12週以上とすること。
〈既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない神経因性膀胱による尿失禁〉
通常、成人にはA型ボツリヌス毒素として200単位を排尿筋に分割して注射する。再投与は前回の効果が減弱した場合に可能であるが、投与間隔は12週以上とすること。

用法及び用量に関連する注意

〈効能共通〉
  1. 複数の適応に本剤を同時投与した場合の安全性は確立されていないため、複数の適応に本剤を同時に投与しないことが望ましい。やむを得ず同時に投与する場合には、それぞれの効能又は効果で規定されている投与量の上限及び投与間隔を厳守するとともに、12週間のA型ボツリヌス毒素の累積投与量として400単位を上限とすること。ただし、上肢痙縮及び下肢痙縮に対する同時投与では合計600単位を上限とし、患者の状態に応じて徐々に増量する等、慎重に投与すること。海外臨床試験において、成人を対象に上肢痙縮及び下肢痙縮に合計600単位を同時に投与した経験はあるが、国内臨床試験では、複数の適応に本剤を同時投与した経験はない。
  2. 本剤の力価(単位)は、A型ボツリヌス毒素製剤特有のもので、B型ボツリヌス毒素製剤とは異なること、また換算もできないことに留意し、必ず本剤の投与量を慎重に確認してから投与すること。
  3. 本剤と他のボツリヌス毒素製剤の同時投与は原則として避けること。本剤と他のボツリヌス毒素製剤を同時投与した経験はなく、安全性及び有効性は確立しておらず、同時に投与した場合には、神経筋接合部の麻痺等が増強し、呼吸困難、嚥下障害等の重篤な副作用が発現するおそれがある。
  4. 他のボツリヌス毒素製剤を投与後に本剤を使用する場合には、少なくとも他のボツリヌス毒素製剤の用法及び用量で規定されている投与間隔をあけるとともに、患者の症状を十分に観察した上で、効果が消失し、安全性上の問題がないと判断された場合にのみ投与すること。他のボツリヌス毒素製剤の投与後に本剤を投与した場合の安全性及び有効性は確立されていない。先に投与された他のボツリヌス毒素の効果が消失する前に本剤を投与した場合には、神経筋接合部の麻痺等が増強し、呼吸困難、嚥下障害等の重篤な副作用が発現するおそれがある。
〈眼瞼痙攣〉
  1. 眼瞼下垂があらわれることがあるので、上眼瞼挙筋周囲への投与を避けること。
〈片側顔面痙攣〉
  1. 痙攣筋の同定が困難な場合には、筋電計を用いて注意深く目標とする部位を同定すること。
  2. 筋ごとの適切な部位及び投与量に留意し、痙攣している筋肉内に注射する。臨床成績等から、以下のような投与筋、投与量及び投与部位数が推奨されている。
    投与筋
    1部位当たりの投与量
    (単位/部位)
    投与部位数
    (部位)
    初回投与
    眼輪筋
    1.25
    4
    その他の筋
    痙攣筋に眼輪筋とあわせて合計10単位を分割投与
    初回投与後の追加投与
    及び再投与
    眼輪筋
    2.5注1)
    4
    皺眉筋
    2.5
    1
    前頭筋
    2.5
    1
    口輪筋
    2.5
    2
    大頬骨筋
    5.0
    1
    小頬骨筋
    5.0
    1
    笑筋
    5.0
    1
    オトガイ筋
    5.0
    1
    広頸筋注2)
    2.5
    上限4
    注1)臨床試験では、追加投与及び再投与時には眼輪筋に対して1部位当たり5単位まで投与された症例がある。なお、眼輪筋に対して2.5単位を超えて投与する場合には、特に副作用の発現に留意しながら慎重に投与すること。
    注2)広頸筋に対しては筋緊張によりスジ状として隆起している部位に投与する。なお、薄い皮筋であるため穿通しないよう注意すること。
〈痙性斜頸〉
  1. 緊張筋が深部であるなど、触診で緊張筋の同定が困難な場合には、筋電計を用いて注意深く目標とする部位を同定すること。
  2. 投与による効果が認められない場合は、用量及び投与部位について再検討した上で追加投与を行うこと。
  3. 本剤注射により投与筋の筋緊張が低下したのち、その協働筋側の緊張が亢進し、異常姿勢を来すことがあるため、初回投与以降では緊張が亢進している筋を注意深く同定し、投与すること。
  4. 初回及び初回後の追加投与を含む240単位までの投与により全く効果が認められない場合は、より高頻度・高投与量で投与を行っても効果が期待できない場合があるため、本剤の投与中止を考慮すること。
  5. 筋ごとの適切な部位及び投与量に留意し、注射する。臨床成績等から、以下のような投与筋、投与量及び投与部位数が推奨されている。
    投与筋
    初回投与量注3)、投与部位数
    最高投与量注4)
    胸鎖乳突筋注1)
    15-50単位を2ヵ所以上に分割
    100単位
    僧帽筋
    30-60単位を2ヵ所以上に分割
    100単位
    板状筋
    25-50単位を2ヵ所以上に分割
    100単位
    斜角筋
    15-25単位
    50単位
    僧帽筋前縁
    15-30単位
    100単位
    肩甲挙筋注2)
    20-30単位
    80単位
    傍脊柱筋
    20単位
    50単位
    広頸筋
    20-30単位
    80単位
    注1)胸鎖乳突筋に投与する場合は、嚥下障害発現のリスクを軽減するため、両側への投与を避けること。
    注2)肩甲挙筋へ投与する場合は、嚥下障害及び呼吸器感染のリスクが増大する可能性があるので注意すること。
    注3)各筋に対し、初めて投与する場合の投与量を示す。
    注4)各投与部位への投与量は30単位を上限とすること。
〈上肢痙縮〉
  1. 緊張筋の同定が困難な場合には、筋電計、超音波検査やスティミュレーター等を用いて注意深く目標とする部位を同定すること。
  2. 筋ごとの適切な部位及び投与量に留意すること。臨床成績等から、以下のような投与筋、投与量及び投与部位数が推奨されている。
    投与筋
    投与量(単位/筋)
    投与部位数(部位/筋)
    上腕二頭筋
    70
    2
    上腕筋
    45
    1
    腕橈骨筋
    45
    1
    橈側手根屈筋
    50
    1
    尺側手根屈筋
    50
    1
    深指屈筋
    50
    1
    浅指屈筋
    50
    1
    長母指屈筋
    20
    1
    母指内転筋
    20
    1
〈下肢痙縮〉
  1. 緊張筋の同定が困難な場合には、筋電計、超音波検査やスティミュレーター等を用いて注意深く目標とする部位を同定すること。
  2. 筋ごとの適切な部位及び投与量に留意すること。臨床成績等から、以下のような投与筋、投与量及び投与部位数が推奨されている。
    投与筋
    投与量(単位/筋)
    投与部位数(部位/筋)
    腓腹筋(内側頭)
    75
    3
    腓腹筋(外側頭)
    75
    3
    ヒラメ筋
    75
    3
    後脛骨筋
    75
    3
〈2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足〉
  1. 緊張筋の同定が困難な場合には、筋電計、超音波検査やスティミュレーター等を用いて注意深く目標とする部位を同定すること。
  2. 筋ごとの適切な部位及び投与量に留意し、注射する。
    (他の筋肉図については、〈下肢痙縮〉を参照)
〈重度の原発性腋窩多汗症〉
  1. 投与前にMinor’sヨウ素デンプン反応等の染色法を使用して目標とする発汗部位を同定すること。
  2. 注射針は針先端の斜め部分を上にして、皮膚表面に対し45°の角度で約2mmの深さへの皮内注射が推奨されている。また、効果のない部分を最小限にとどめるため、注射位置を下図のように等間隔でジグザグ状に配置することが推奨されている。
〈斜視〉
  1. 外眼筋に投与する際には、筋電計等の使用や外眼筋の外科的露出により、注意深く目標とする部位を同定すること。
  2. 本剤投与前に点眼麻酔薬の投与が推奨されている。
  3. 薬液量は1つの筋あたり0.05~0.15mLが推奨されている。
  4. 筋ごとの適切な部位及び投与量に留意すること。臨床成績等から、初回投与では以下のような投与筋、投与量及び投与部位数が推奨されている。
    投与筋
    初回投与量(単位/筋)
    投与部位数(部位/筋)
    内直筋
    1.25~2.5注1)又は2.5~5.0注2)
    1
    外直筋
    1.25~2.5注1)又は2.5~5.0注2)
    1
    上直筋
    1.25~2.5注3)
    1
    下直筋
    1.25~2.5注3)
    1
    注1)20プリズムジオプトリー未満の水平斜視
    注2)20~50プリズムジオプトリーの水平斜視
    注3)上下斜視
〈痙攣性発声障害〉
  1. 内喉頭筋に投与する際には、筋電計を用いて注意深く目標とする筋を同定すること。
  2. 薬液量は片側あたり0.1mLが推奨されている。
  3. 内転型痙攣性発声障害の治療では、患者を背臥位とし、輪状軟骨上縁の正中より約5mm外側(投与側)に注射針を経皮的に刺入した後、輪状甲状間膜を貫通させて甲状披裂筋へと到達させる。両側投与を行った場合には嚥下障害等の有害事象がより長期間持続することがあるので、再投与時の両側投与の要否は、片側投与による治療効果と有害事象の発現状況を確認した後に慎重に検討すること。
  4. 外転型痙攣性発声障害では、投与前の内視鏡検査により、左右の声帯の可動性及び声門間隙の大きさを確認し、通常、病的運動が強い側の後輪状披裂筋に投与する。注射の際には患者を背臥位とし、投与側の反対側へ頭部を回旋させた上で、輪状軟骨の後面に向けて外側方向から経皮的に注射針を刺入する。投与側の声帯が動かなくなった場合に声門の閉鎖又は狭窄による呼吸困難等が生じないよう、反対側の声帯が十分動く場合にのみ投与することとし、両側への投与は行わないこと。
  5. 混合型痙攣性発声障害における有効性及び安全性は確立していない。甲状披裂筋及び後輪状披裂筋への同時投与後に重篤な呼吸困難が報告されていることから、甲状披裂筋及び後輪状披裂筋への同時投与は避けること。
〈過活動膀胱、神経因性膀胱〉
  1. 排尿筋に投与する際には、硬性膀胱鏡又は軟性膀胱鏡を用いて注意深く目標とする部位を同定すること。
  2. 本剤投与前には、必要に応じて局所麻酔薬の注入による膀胱粘膜麻酔や鎮静薬の投与を行うこと。局所麻酔薬を注入した場合は投与前に除去し、膀胱内を生理食塩液で洗浄すること。自律神経異常反射を来しやすい背景を有する神経因性膀胱患者では、全身麻酔等の適切な麻酔を行うこと。
  3. 膀胱壁における注射部位を十分に確認するため、本剤の投与直前に膀胱内に生理食塩液を注入し、膀胱を適度に拡張する。その際、膀胱を拡張しすぎると、投与時に薄くなった膀胱壁を注射針で穿通するおそれがあるため、生理食塩液の過量注入に注意すること。投与終了後、自排尿不能な患者では膀胱内に注入した生理食塩液を直ちに除去し、自排尿可能な患者では膀胱内に注入した生理食塩液を自ら排出できることを確認すること。
  4. 本剤100単位を投与する際は薬液10mLを20ヵ所に、本剤200単位を投与する際は薬液30mLを30ヵ所に分割して注射することが推奨されている。各注射部位の間隔は約1cm、注射針の刺入深度は約2mmとし、膀胱三角部への注射は避けること。

重要な基本的注意

〈効能共通〉
  1. 本剤は眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、痙性斜頸、上肢痙縮、下肢痙縮、2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足、重度の原発性腋窩多汗症、斜視、痙攣性発声障害、過活動膀胱、神経因性膀胱の適応のみに使用する製剤のため、眉間又は目尻の表情皺に対しては、ボトックスビスタ注用50単位を用いること。これら以外の適応には安全性が確立していないので絶対使用しないこと。
  2. 本剤の投与に際しては、患者又はそれに代わる適切な者に、次の事項について文書を用いてよく説明し、文書による同意を得た後、使用する。
    1. 本剤の有効成分は、ボツリヌス菌によって産生されるA型ボツリヌス毒素である。
    2. 本剤の投与は対症療法であり、その効果は、眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、痙性斜頸、上肢痙縮、下肢痙縮、2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足、斜視、痙攣性発声障害では通常3~4ヵ月、重度の原発性腋窩多汗症では通常4~9ヵ月、過活動膀胱では通常4~8ヵ月、神経因性膀胱では通常8~11ヵ月で消失し、投与を繰り返す必要がある。
    3. 本剤の投与を長期間繰り返した場合、中和抗体の産生により、効果が認められなくなることがある。
    4. 他の医療施設でボツリヌス毒素の投与を受けている場合には、治療対象疾患及び投与日を必ず申し出る。
    5. 妊娠する可能性のある女性は、投与中及び最終投与後2回の月経を経るまでは避妊する。
    6. 男性は、投与中及び最終投与後少なくとも3ヵ月は避妊する。
    7. 日常生活を制限されていた患者は、本剤投与後、過度の筋収縮を伴う労作を避け、活動を徐々に再開する。
    8. 本剤投与後、3~4ヵ月の間に呼吸困難、脱力感等の体調の変化があらわれた場合には、直ちに医師に申し出る。
    9. 痙性斜頸及び痙攣性発声障害に対する本剤の、特に初回及び2回目の投与後1、2週間は、嚥下障害、声質の変化、息苦しい等の発現に留意するとともに、発現が認められた場合には、直ちに専門医の診療を受ける。
    10. 痙性斜頸に対する本剤投与後、姿勢の変化により今まで緊張していなかった筋が緊張することがある。
    11. 上肢痙縮及び下肢痙縮患者においては、本剤投与に伴う活動性の上昇や筋力バランスの変化により、転倒等が起こりやすくなる可能性がある。
    12. 過活動膀胱及び神経因性膀胱患者においては、本剤投与により、残尿量が増加し導尿が必要になる場合がある。また、本剤投与により尿閉及び尿路感染が発現することがある。本剤投与後に排尿困難、混濁尿、頻尿、排尿痛、発熱、悪寒、血尿等の症状があらわれた場合には、直ちに医師に申し出る。
    13. 脊髄損傷等を有する神経因性膀胱患者においては、本剤投与により筋力低下等が発現した場合、日常生活動作の制限が増大する可能性がある。
  3. 本剤投与後、抗体が産生されることにより、耐性が生じる可能性がある。効果の減弱がみられる場合には、抗体検査を実施する。抗体産生がみられない場合は、追加投与することができる。抗体が産生された場合には、投与を中止すること。
  4. ボツリヌス毒素の投与により、投与部位以外の遠隔筋に対する影響と考えられる副作用があらわれることがあり、嚥下障害、肺炎、重度の衰弱等に伴う死亡例も報告されている。
  5. 本剤投与後、脱力感、筋力低下、めまい、視力低下があらわれることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意させること。
  6. 本剤はできるだけ少量(6. 用法及び用量の初回投与量又は承認用量の下限を参照)から投与を開始することが望ましい。なお、疾患の重症度に応じて高用量を投与しても、効果は期待できない場合がある。
〈眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、斜視〉
  1. 本剤を眼輪筋又は外眼筋へ投与する場合は、以下の点に注意すること。
    • 投与時ごとに視力検査を実施することが望ましい。
    • 眼科的観察を併せて実施し、特に眼球を傷害しないように眼球の保護に十分注意すること。また、経過観察を十分に行い、眼科的異常があらわれた場合には、直ちに精密検査を受けさせること。
  2. 本剤の眼瞼深部への投与により、本剤が眼筋に作用することによって複視があらわれることがあるので、投与部位に十分注意し、慎重に投与すること。
  3. 本剤は、低用量でも閉瞼不全等の副作用発現がみられることがあるので、観察を十分に行いながら慎重に投与すること。
〈斜視〉
  1. 外眼筋への投与により、眼窩に針を刺入することによって球後出血が生じ、網膜循環に障害を来すおそれがあるので、適切な検査や眼窩減圧の処置を行うことが望ましい。また、眼球を針で穿通した場合には、検眼鏡による診断を行うこと。
〈痙攣性発声障害〉
  1. 抗血小板薬及び抗凝固薬を投与中の患者においては、喉頭への注射によって出血や血腫が生じ、誤嚥や呼吸困難につながるおそれがあることから、本剤投与前に抗血小板薬及び抗凝固薬の休薬等を行うこと。
〈過活動膀胱、神経因性膀胱〉
  1. 本剤を投与する場合は、尿路感染の発現に注意し、適切な感染対策を講じること。
  2. 抗血小板薬及び抗凝固薬を投与中の患者においては、排尿筋への注射による出血のリスクが増大することから、本剤投与前に抗血小板薬及び抗凝固薬の休薬等を行うこと。
  3. 本剤の投与手技により血尿、排尿困難、膀胱痛等が発現するおそれがある。本剤投与後は患者の状態を十分に観察し、症状があらわれた場合には適切に処置すること。
  4. 導尿を実施していない患者においては、投与後2週間以内に残尿量を測定し、その後は必要に応じて投与後12週までを目安に残尿量測定を定期的に行うこと。

特定の背景を有する患者に関する注意

合併症・既往歴等のある患者

〈効能共通〉
  1. 慢性の呼吸器障害のある患者
    本剤の投与により、病態を悪化させる可能性がある。
  2. 重篤な筋力低下あるいは萎縮がある患者
    本剤の投与により、症状を悪化させる可能性がある。
  3. 閉塞隅角緑内障のある患者又はその素因(狭隅角等)のある患者
    本剤はアセチルコリンの放出抑制作用を有するため、症状を悪化させる可能性がある。
  4. 神経学的障害のある患者
    嚥下困難等を有する患者、脳性麻痺等重度の障害を有する小児患者、痙縮患者等では、投与部位以外の遠隔筋に対する影響と考えられる副作用のリスクが増加するため特に注意すること。
〈神経因性膀胱〉
  1. 自律神経異常反射を来しやすい背景を有する患者
    本剤の投与手技に起因する自律神経異常反射を来すおそれがあることから、直ちに適切な処置を行えるようにしておくこと。

生殖能を有する者

  1. 妊娠する可能性のある女性は、投与中及び最終投与後2回の月経を経るまでは避妊する。
  2. 男性は、投与中及び最終投与後少なくとも3ヵ月は避妊する。精子形成期間に投与されることを避けるため。

妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。外国において、本剤を投与された患者で胎児死亡が報告されており、また、動物実験で妊娠及び胎児への影響が認められている。

授乳婦

投与しないこと。

小児等

  1. 2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足及び12歳以上の斜視患者以外の適応では、小児を対象とする有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
  2. 小児において本剤による治療中に死亡例が報告されており、その中には重度の神経筋疾患、嚥下困難、嚥下性肺炎、痙攣発作、心臓疾患等の危険因子を有する症例も認められた。四肢麻痺の患者、経管栄養補給を受けている患者又は嚥下性肺炎や肺疾患の既往を有する患者等、重度の障害を有する小児患者に投与する場合には、観察を十分に行うこと。

高齢者

少量(6. 用法及び用量の初回投与量又は承認用量の下限を参照)から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に、生理機能が低下している。

相互作用

併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
筋弛緩剤
ツボクラリン塩化物塩酸塩水和物
ダントロレンナトリウム水和物等
閉瞼不全、頸部筋脱力等の過剰な筋弛緩があらわれるおそれがある。嚥下障害の発現が高まるおそれがある。
筋弛緩作用が増強されることがある。併用薬の抗コリン作用による口渇、嚥下困難等が出現するため、嚥下障害が増強されることがある。
筋弛緩作用を有する薬剤
スペクチノマイシン塩酸塩水和物
アミノグリコシド系抗生物質
ゲンタマイシン硫酸塩、フラジオマイシン硫酸塩等
ポリペプチド系抗生物質
ポリミキシンB硫酸塩等
テトラサイクリン系抗生物質
リンコマイシン系抗生物質
抗痙縮剤
バクロフェン等
抗コリン剤
ブチルスコポラミン臭化物、トリヘキシフェニジル塩酸塩等
ベンゾジアゼピン系薬剤及び類薬
ジアゼパム、エチゾラム等
ベンザミド系薬剤
チアプリド塩酸塩、スルピリド等
閉瞼不全、頸部筋脱力等の過剰な筋弛緩があらわれるおそれがある。嚥下障害の発現が高まるおそれがある。
筋弛緩作用が増強されることがある。併用薬の抗コリン作用による口渇、嚥下困難等が出現するため、嚥下障害が増強されることがある。
他のボツリヌス毒素製剤
過剰な筋弛緩があらわれることがあり、呼吸困難、嚥下障害等を発現するリスクが高まるおそれがあるため、本剤と他のボツリヌス毒素製剤の同時投与は原則として避けること。
本剤及びこれらの薬剤は、ともに筋弛緩作用を有するため作用が増強されるおそれがある。

副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

重大な副作用

  1. ショック、アナフィラキシー、血清病(0.01%)
    本剤投与後、悪心等の体調の変化がないか、患者の状態を十分観察し、異常がないことを確認すること。呼吸困難、全身潮紅、血管性浮腫、発疹等の症状が認められた場合には投与を中止し、血圧の維持、体液の補充管理、気道の確保等の適切な処置を行うこと。
  2. 眼障害(0.34%)
    重篤な角膜露出、持続性上皮欠損、角膜潰瘍、角膜穿孔の報告があるので、兎眼、閉瞼不全等があらわれた場合には、眼球の乾燥を避けるため人工涙液等の点眼剤を投与するなど適切な処置を行うこと。
  3. 嚥下障害(0.75%)、呼吸障害(0.03%)
    嚥下障害から嚥下性肺炎を来し、重篤な呼吸困難に至ったとする報告がある。また、本剤の投与により呼吸機能低下があらわれることがある。初回及び2回目の投与後1、2週間は嚥下障害、声質の変化、呼吸困難等の発現に特に留意すること。
  4. 痙攣発作(0.01%未満)
    痙攣発作あるいはその再発が報告されている。痙攣発作の素因のある患者に投与する場合には特に注意すること。なお、小児では大部分が脳性麻痺患者からの報告であった。
  5. 尿閉(0.05%)
    排尿困難等の症状があらわれた場合には、必要に応じて導尿を実施すること。
  6. 尿路感染(0.06%)
    混濁尿、頻尿、排尿痛、発熱、悪寒、血尿等の症状があらわれた場合には、適切な処置を行うこと。

その他の副作用

0.5~2%未満
0.5%未満
頻度不明
過剰な筋弛緩作用
兎眼、閉瞼不全、局所性筋力低下(頸部筋脱力、口角下垂等)、眼瞼下垂、顔面麻痺
眼瞼内反、筋力低下
眼瞼外反
流涙
眼の乾燥感、複視、角膜糜爛、霧視(感)、角膜炎、結膜炎、眼痛、視力低下、眼脂、羞明、斜視、眼運動障害、眼の刺激
眼球後出血、眼の貫通性外傷、ホームズ・アディー瞳孔、硝子体出血
皮膚
発疹、そう痒感、脱毛(睫毛眉毛脱落を含む)、皮膚炎、多形紅斑
乾癬様皮疹、斑状出血、皮膚の異臭、皮下結節
注射部位
注射部出血斑注1)、注射部腫脹、注射部疼痛、近隣筋の疼痛及び緊張亢進、注射部ひきつり感、注射部熱感、注射部不快感、注射部感染、注射部位過敏反応
気胸注2)
血液
白血球減少、血小板減少
呼吸器
肺炎、感冒様症状、呼吸不全、発声障害、咳嗽、誤嚥
上気道性喘鳴
消化器
嚥下障害
食欲不振、嘔気、嘔吐、口内乾燥、下痢、便秘、腹痛
レッチング
精神神経系
頭痛、感覚鈍麻、めまい、失神、感覚異常、傾眠、神経根障害、不眠症
不器用、運動低下
筋骨格
筋緊張亢進、筋痛、四肢痛、筋痙縮、関節痛
弾発指、滑液包炎
泌尿器
排尿困難、残尿量増加、頻尿
細菌尿、膀胱憩室、尿失禁
その他
肝機能検査値異常、倦怠(感)、脱力(感)、CK上昇、発熱、発汗注3)、耳鳴、構語障害、ほてり、転倒、挫傷、歩行障害、ウイルス感染、疼痛、関節脱臼
聴力低下、耳感染、起立性低血圧、脱神経性萎縮/筋肉萎縮、疲労
発現頻度には使用成績調査の結果を含む。
注1)眼瞼痙攣患者において、眼瞼の軟部組織に斑状出血が起こる可能性があるため、注射直後に注射部位を軽く押さえることで斑状出血を軽減できる。
注2)投与手技に関連した気胸が報告されているので、肺(特に肺尖部)に近い部位に投与する場合には注意すること。
注3)原発性腋窩多汗症患者において、腋窩部以外からの発汗が増加することがある。

過量投与

  1. 症状
    1. 投与部位及び周辺部位に過剰な薬理反応である脱力、筋肉麻痺等の局所性の副作用があらわれることがある。症状や兆候は投与直後にあらわれないこともある。
    2. 外国において、投与筋以外の遠隔筋に対する影響が疑われる眼瞼下垂、構音障害、嚥下障害、呼吸困難、筋無力症等が報告されている。
  2. 処置
    1. 必要に応じて入院を考慮すること。
    2. 投与直後の場合には抗毒素の投与を検討してもよいが、治療上の有益性と危険性を慎重に判断すること。なお、既にボツリヌス中毒症状(全身性の脱力及び筋肉麻痺など)が発現した時点での抗毒素投与は、無効である。

適用上の注意

薬剤調製時の注意
  1. 調製方法
    1. 本剤1バイアルは日局生理食塩液を用いて溶解する。
      溶解液の量(日局生理食塩液)
      溶解後のボツリヌス毒素濃度
      50単位
      1.0mL
      5.0単位/0.1mL
      2.0mL
      2.5単位/0.1mL
      4.0mL
      1.25単位/0.1mL
      5.0mL
      1.0単位/0.1mL
      100単位
      1.0mL
      10.0単位/0.1mL
      2.0mL
      5.0単位/0.1mL
      4.0mL
      2.5単位/0.1mL
      8.0mL
      1.25単位/0.1mL
      10.0mL
      1.0単位/0.1mL
      神経因性膀胱への投与に際し、本剤200単位を30mLの薬液として調製する場合は、①100単位バイアル2本をそれぞれ6mLの日局生理食塩液で溶解し、②合計12mLの薬液を3本の10mLシリンジに4mLずつ吸引した後、③各シリンジに追加で6mLの日局生理食塩液を吸引する。3本のシリンジはそれぞれ薬液10mL(約67単位)を含有する。
    2. バイアルの陰圧が保たれていない場合は使用しないこと。そのバイアルに0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液を加えて失活させた後、密閉可能な廃棄袋又は箱に廃棄すること。
    3. 変性するので、泡立ちや激しい撹拌を避けること。
    4. 保存剤を含んでいないので、調製後は速やかに使用する。なお、調製後は冷凍しないこと。
薬剤投与時の注意
  1. 投与部位
    〈眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、痙性斜頸、上肢痙縮、下肢痙縮、2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足、斜視、痙攣性発声障害、過活動膀胱、神経因性膀胱〉
    1. 用法及び用量に示すとおり、適用部位の筋肉内にのみ注射すること。特に、眼輪筋切除術施行後の患者に投与する場合は、より正確に目標とする部位を同定するため、必ず筋電計を用いて筋活動電位を確認すること。
    〈重度の原発性腋窩多汗症〉
    1. 用法及び用量に示すとおり、皮内にのみ注射すること。
  2. 投与時期
    〈痙攣性発声障害〉
    全身麻酔の必要な手術を予定している患者においては、本剤の作用による声帯の弛緩が周術期の誤嚥等のリスクを増加させる可能性があるため、手術が終了してから本剤を投与することが望ましい。
廃棄時の注意
処置後、残った薬液は、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液を加えて失活させた後、密閉可能な廃棄袋又は箱に廃棄する。また、薬液の触れた器具等は同様に0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液を加えて失活させた後、密閉可能な廃棄袋又は箱に廃棄する。
汚染時の注意
  1. 本剤が飛散した場合はすべて拭き取る。
    1. 溶解前の場合は、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液をしみ込ませた吸収性素材で拭き、乾かす。
    2. 溶解後の場合は、吸収性素材で拭き取った後に、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液で拭き、乾かす。
  2. 本剤が皮膚に付着した場合は、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液で洗い、水で洗い流す。
  3. 本剤が眼に入った場合は、水で洗い流す。

その他の注意

臨床使用に基づく情報
  1. 因果関係は不明であるが、本剤投与後不整脈、心筋梗塞等の心血管系障害があらわれることがあり、致命的な転帰に至る例も報告されている。これらの症例には、心臓疾患等の危険因子を有していた症例も多く含まれていた。
  2. 外国において、因果関係が明らかでないものの、本剤による治療中に視神経萎縮が生じ、視力が低下した症例の報告があるので、本剤投与時に視力検査を実施することが望ましい。
  3. 外国において、妊娠初期に本剤500単位を投与された患者で、胎児の死亡が報告されている。
非臨床試験に基づく情報
  1. ラットにおける交配前投与では、本剤の筋弛緩作用による後肢麻痺に伴う二次的な影響であると考えられる妊娠率、受胎率及び授胎率の低下が、器官形成期投与では、胎児体重の減少がみられた。また、マウスにおける器官形成期の間欠投与による試験において、骨化数の減少がみられた。
  2. 動物実験(ラット及びサル)により、本剤投与部位以外の遠隔の筋において、筋萎縮や筋重量減少等の障害が発生したとの報告がある。
  3. 膀胱周囲臓器への誤投与による影響を検討したサルの毒性試験において、本剤を前立腺部尿道及び直腸並びに前立腺内注)に投与した際に膀胱結石が用量依存的に認められた。
    注)過活動膀胱及び神経因性膀胱に対して承認されている本剤の用法は「排尿筋に注射」である。

薬物動態

血中濃度

ラットに125I-A型ボツリヌス毒素を単回筋肉内投与したときの血漿中濃度は、2時間後に最高値となり、投与量の3%が認められ、24時間後には1%であった。

分布

ラットに125I-A型ボツリヌス毒素を単回筋肉内投与したとき、投与部位の筋肉内には、投与直後に投与量の84%を認めたが、24時間後には5%に減少し、消失半減期は約10時間と推定された。

排泄

ラットに125I-A型ボツリヌス毒素を単回筋肉内投与したとき、投与後24時間以内に投与量の60%が尿中排泄された。

臨床成績

有効性及び安全性に関する試験

〈眼瞼痙攣〉
  1. 国内臨床試験
    国内延べ6施設で総計88例を対象として実施した臨床試験において、評価可能な79例の改善率(改善以上)は89.9%(71/79例)であった,
    改善度は、「著明改善」、「改善」、「やや改善」、「不変」、「増悪」の5段階で行った。
    注)承認外の用量を含む。
〈片側顔面痙攣〉
  1. 国内臨床試験
    国内延べ13施設で総計97例を対象として実施した臨床試験において、評価可能な94例の改善率(改善以上)は74.5%(70/94例)であった,
    改善度は、「著明改善」、「改善」、「やや改善」、「不変」、「増悪」の5段階で行った。
    なお、初回投与時の投与部位は下記のとおりである。
    眼輪筋94/94例、皺眉筋11/94例、前頭筋6/94例、口輪筋25/94例、大頬骨筋67/94例、小頬骨筋13/94例、笑筋15/94例、オトガイ筋7/94例、広頸筋1/94例
    注)承認外の用量を含む。
〈痙性斜頸〉
  1. 国内臨床試験
    国内延べ15施設で総計174例を対象として実施した臨床試験において、評価可能な166例の改善率(改善以上)は41.6%(69/166例)であった,
    改善度は、「著明改善」、「改善」、「やや改善」、「不変」、「増悪」の5段階で行った。
    なお、初回投与時の投与部位は下記のとおりである。
    胸鎖乳突筋120/166例、僧帽筋90/166例、板状筋118/166例、斜角筋9/166例、僧帽筋前縁16/166例、肩甲挙筋8/166例、傍脊柱筋3/166例、広頸筋5/166例
    注)承認外の用量を含む。
〈上肢痙縮〉
  1. 国内第Ⅲ相試験
    国内19施設で脳卒中後の成人上肢痙縮患者109例を対象として実施したプラセボ対照二重盲検比較試験において、本剤注1)又はプラセボ(それぞれの用量に対応)を複数の緊張筋に投与したとき、主要評価項目である手関節のModified Ashworth Scale(MAS:筋痙縮の度合いを6段階で評価)の変化量に基づく時間曲線下面積(平均値±標準偏差)は、下表のとおりであり、本剤240単位群においてプラセボ群に対する統計学的な有意差が認められた(p<0.001、t検定)。
    注1)本剤は240単位群と150単位群を設定し、それぞれ以下の用量を投与した。
    本剤240単位群:手関節、手指関節及び母指関節屈筋群に240単位を投与(母指関節に痙縮がない場合は手関節及び手指関節屈筋群に200単位を投与)
    本剤150単位群:手関節、手指関節及び母指関節屈筋群に150単位を投与(母指関節に痙縮がない場合は手関節及び手指関節屈筋群に120単位を投与)
    本剤240単位群
    (51例)
    プラセボ群
    (26例)
    本剤150単位群
    (21例)
    プラセボ群
    (11例)
    MASの変化量に基づく時間曲線下面積
    -10.397±8.9313
    -3.567±4.7189
    -10.036±7.7743
    -6.227±8.6584
    プラセボとの差
    [95%信頼区間]
    -6.830
    [-10.567,-3.093]
    -3.808
    [-9.950, 2.333]
    p値
    p<0.001
    なお、各評価時期における手関節のMASの推移は下表のとおりであった。
    MAS
    MAS変化量
    本剤240単位群
    プラセボ群
    本剤240単位群
    プラセボ群
    群間差
    [95%信頼区間]
    投与前
    3.31±0.469(51)
    3.27±0.452(26)
    投与1週後
    2.66±0.822(51)
    3.04±0.599(26)
    -0.66±0.745(51)
    -0.23±0.430(26)
    -0.43
    [-0.74, -0.11]
    投与4週後
    2.26±0.885(51)
    2.79±0.724(26)
    -1.05±0.912(51)
    -0.48±0.671(26)
    -0.57
    [-0.97, -0.17]
    投与6週後
    2.17±0.869(49)
    2.98±0.728(26)
    -1.15±0.931(49)
    -0.29±0.569(26)
    -0.86
    [-1.26, -0.47]
    投与8週後
    2.32±0.914(48)
    2.94±0.838(24)
    -1.01±0.970(48)
    -0.35±0.599(24)
    -0.66
    [-1.09, -0.22]
    投与12週後
    2.51±0.894(47)
    3.08±0.640(25)
    -0.83±0.842(47)
    -0.20±0.408(25)
    -0.63
    [-0.99, -0.27]
    本剤150単位群
    プラセボ群
    本剤150単位群
    プラセボ群
    群間差
    [95%信頼区間]
    投与前
    3.33±0.483(21)
    3.18±0.405(11)
    投与1週後
    2.48±0.915(21)
    2.68±0.845(11)
    -0.86±0.777(21)
    -0.50±0.742(11)
    -0.36
    [-0.94, 0.22]
    投与4週後
    2.45±0.893(21)
    2.45±1.214(11)
    -0.88±0.740(21)
    -0.73±1.009(11)
    -0.15
    [-0.79, 0.48]
    投与6週後
    2.38±0.907(21)
    2.50±1.162(11)
    -0.95±0.789(21)
    -0.68±0.956(11)
    -0.27
    [-0.92, 0.37]
    投与8週後
    2.40±1.032(21)
    2.68±0.956(11)
    -0.93±0.884(21)
    -0.50±0.742(11)
    -0.43
    [-1.07, 0.21]
    投与12週後
    2.62±1.071(21)
    2.91±0.831(11)
    -0.71±0.845(21)
    -0.27±0.647(11)
    -0.44
    [-1.04, 0.15]
    平均値±標準偏差(例数)
    また、二重盲検期に引き続いて非盲検下で本剤注2)を反復投与したときの各投与回における手関節のMASの推移は下表のとおりであった。
    注2)手関節、手指関節及び母指関節屈筋群に240単位を投与(母指関節に痙縮がない場合は手関節及び手指関節屈筋群に200単位を投与)
    1回目
    2回目
    3回目
    投与前
    2.89±0.720(97)
    2.57±0.696(77)
    2.50±0.652(48)
    投与4週後
    1.85±0.843(96)
    1.69±0.835(77)
    1.86±0.608(48)
    投与8週後
    1.93±0.940(95)
    1.88±0.825(75)
    1.89±0.714(47)
    投与12週後
    2.22±0.903(92)
    2.20±0.780(74)
    2.06±0.784(47)
    平均値±標準偏差(例数)
    本剤を投与された全症例における副作用発現頻度は16%(17/106例)であった。主な副作用は、血中CK増加3%(3/106例)、無力症2%(2/106例)、末梢性浮腫2%(2/106例)であった。
  2. 国内第Ⅲ相試験
    国内40施設で脳卒中後の成人上肢痙縮患者124例を対象として実施したプラセボ対照二重盲検比較試験において、本剤400単位、又は、240単位及びプラセボ注1)を複数の緊張筋に投与したとき、主要評価項目である投与後6週時における肘関節のMASに基づくレスポンダー率(MASスコアがベースラインから少なくとも1減少した被験者の割合)は、下表のとおりであり、本剤240単位群(肘関節屈筋群にプラセボ)に比べ本剤400単位群(肘関節屈筋群に160単位)で高かった。
    注1)本剤は400単位群と240単位群を設定し、それぞれ以下の用量を投与した。
    本剤400単位群:肘関節屈筋群に160単位、手関節及び(母指を含む)手指関節屈筋群に240単位を投与(総投与量400単位)
    本剤240単位群:肘関節屈筋群にプラセボ、手関節及び(母指を含む)手指関節屈筋群に240単位を投与(総投与量240単位)
    本剤400単位群
    (61例)
    本剤240単位群
    (63例)
    MASに基づくレスポンダー率
    (レスポンダー例数)注2)
    68.9%
    (42)
    50.8%
    (32)
    群間差
    [95%信頼区間]
    18.1%
    [1.1, 35.0]
    注2)二重盲検期の投与6週後
    なお、各評価時期における肘関節のMAS変化量の推移は下表のとおりであった。
    本剤400単位群
    本剤240単位群
    群間差
    [95%信頼区間]注4)
    MAS[平均値(例数)]注3)
    投与前
    4.1(61)
    4.1(63)
    MAS変化量[調整済平均値±標準誤差(例数)]注4)
    投与2週後
    -1.07±0.102(60)
    -0.59±0.089(63)
    -0.48[-0.75, -0.22]
    投与4週後
    -1.12±0.110(59)
    -0.70±0.097(63)
    -0.42[-0.71, -0.13]
    投与6週後
    -1.09±0.128(59)
    -0.71±0.107(63)
    -0.37[-0.71, -0.04]
    投与12週後
    -0.61±0.101(57)
    -0.35±0.072(60)
    -0.27[-0.51, -0.02]
    注3)MASスコアの0, 1, 1+, 2, 3, 4はそれぞれ0, 1, 2, 3, 4, 5として集計
    注4)調整済平均値及び95%信頼区間は、投与群、評価時点、投与群と評価時点の交互作用、肘関節のMASスコアのベースライン値、及び、肘関節のMASスコアのベースライン値と評価時点の交互作用を固定効果としたmixed model for repeated measuresを用いて算出
    また、二重盲検期に引き続いて非盲検下で本剤注5)を反復投与したときの各投与回における肘関節のMAS変化量の推移は下表のとおりであった。
    注5)肘関節、手関節及び(母指を含む)手指関節屈筋群、前腕の回内筋、肩関節の内転・内旋筋に合計400単位を分割投与
    1回目
    2回目
    3回目
    MAS変化量[平均値±標準偏差(例数)]注6)
    投与前
    -0.4±0.55(116)
    -0.5±0.54(109)
    -0.6±0.56(81)
    投与2週後
    -1.4±0.88(115)
    -1.4±1.08(109)
    -1.3±0.97(80)
    投与4週後
    -1.5±0.95(113)
    -1.4±1.16(108)
    -1.4±0.98(81)
    投与6週後
    -1.3±0.99(115)
    -1.3±1.12(108)
    -1.4±1.06(81)
    投与12週後
    -0.8±0.92(113)
    -0.9±0.89(108)
    -1.1±0.94(81)
    注6)ベースラインからの変化量(MASスコアの0, 1, 1+, 2, 3, 4はそれぞれ0, 1, 2, 3, 4, 5として集計)
    本剤を投与された全症例における副作用発現頻度は2%(2/124例)であった。その内訳は、筋力低下<1%(1/124例)、注射部位腫脹<1%(1/124例)であった。
〈下肢痙縮〉
  1. 国内第Ⅲ相試験
    国内19施設で脳卒中後の成人下肢痙縮患者120例を対象として実施したプラセボ対照二重盲検比較試験において、本剤300単位又はプラセボを複数の緊張筋に投与したとき、主要評価項目である足関節のMASの変化量に基づく時間曲線下面積(平均値±標準偏差)は、本剤群-8.513±6.6904、プラセボ群-5.085±6.6496、本剤群とプラセボ群の平均値の差とその95%信頼区間は-3.428[-5.841, -1.016]であり、本剤群においてプラセボ群に対する統計学的な有意差が認められた(p=0.006、t検定)。
    なお、各評価時期における足関節のMASの推移は下表のとおりであった。
    MAS
    MAS変化量
    本剤群
    プラセボ群
    本剤群
    プラセボ群
    群間差
    [95%信頼区間]
    投与前
    3.28±0.451(58)
    3.24±0.432(62)
    投与1週後
    2.67±0.787(57)
    2.72±0.838(62)
    -0.61±0.675(57)
    -0.52±0.765(62)
    -0.09
    [-0.35, 0.17]
    投与4週後
    2.40±0.828(56)
    2.81±0.785(62)
    -0.88±0.687(56)
    -0.43±0.718(62)
    -0.46
    [-0.71, -0.20]
    投与6週後
    2.35±0.829(57)
    2.78±0.804(61)
    -0.91±0.733(57)
    -0.47±0.712(61)
    -0.45
    [-0.71, -0.18]
    投与8週後
    2.45±0.735(54)
    2.82±0.758(61)
    -0.82±0.660(54)
    -0.43±0.676(61)
    -0.40
    [-0.65, -0.15]
    投与12週後
    2.70±0.866(54)
    2.84±0.750(61)
    -0.56±0.685(54)
    -0.40±0.583(61)
    -0.15
    [-0.39, 0.08]
    平均値±標準偏差(例数)
    また、二重盲検期に引き続いて非盲検下で本剤300単位を反復投与したときの各投与回における足関節のMASの推移は下表のとおりであった。
    1回目
    2回目
    3回目
    投与前
    2.91±0.694(107)
    2.45±0.618(92)
    2.41±0.593(58)
    投与4週後
    1.95±0.699(105)
    1.76±0.643(91)
    1.85±0.635(58)
    投与8週後
    1.95±0.636(103)
    1.88±0.631(89)
    1.87±0.502(55)
    投与12週後
    2.23±0.730(104)
    2.09±0.712(88)
    1.90±0.556(55)
    平均値±標準偏差(例数)
    本剤を投与された全症例における副作用発現頻度は16%(18/115例)であった。主な副作用は、注射部位疼痛3%(4/115例)、筋痛3%(3/115例)、肝機能異常2%(2/115例)であった。
〈2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足〉
  1. 海外第Ⅲ相試験
    海外9施設で2歳以上の尖足を有する小児脳性麻痺患者における下肢痙縮を対象として実施した非盲検試験において、本剤を投与された全症例における副作用発現頻度は31%(67/215例)であった。主な副作用は、転倒9%(20/215例)、下肢の疼痛2%(5/215例)、下肢の脱力2%(5/215例)、全身の脱力2%(4/215例)であった。
〈重度の原発性腋窩多汗症〉
  1. 国内第Ⅲ相試験
    国内14施設で成人原発性腋窩多汗症患者152例を対象として実施したプラセボ対照二重盲検比較試験において、片腋窩あたり本剤50単位又はプラセボを複数の部位(10~15ヵ所)に皮内投与したとき、主要評価項目である投与4週後の重量測定法による発汗重量のレスポンダー率注1)は、下表のとおりであり、プラセボ群と比べ本剤群で統計学的に有意に高かった(p<0.001、Fisherの直接確率検定)。
    注1)レスポンダー率:ベースラインと比較して両腋窩の平均発汗重量が50%以上減少している被験者の割合
    レスポンダー率
    群間差
    [95%信頼区間]
    p値
    本剤50単位群
    プラセボ群
    投与4週後
    96.2(75/78)
    45.9(34/74)
    50.2
    [38.1, 62.3]
    <0.001
    レスポンダー率(%)(レスポンダー例数/評価例数)
    p値:Fisherの直接確率検定
    また、二重盲検期に引き続いて非盲検下で片腋窩あたり本剤50単位を投与したとき、投与4週後の重量測定法による発汗重量のレスポンダー率は、93.9%(93/99例)であった。
    本剤を投与された全症例における副作用発現頻度は2%(3/144例)であった。その内訳は、代償性発汗2%(3/144例)、四肢痛<1%(1/144例)であった。
〈斜視〉
  1. 国内第Ⅲ相試験
    国内13施設で12歳以上の小児及び成人水平斜視患者41例を対象として実施した無治療対照評価者遮蔽比較試験において、初回投与量として1外眼筋あたり本剤1.25~5.0単位を投与した(無治療群は治験薬を投与せず経過観察)。主要評価項目である投与4週後の正面眼位における斜視角[遠見斜視角と近見斜視角の平均値(プリズムジオプトリー、以下PD)]のベースラインからの変化量は、下表のとおりであり、投与前の斜視角が20PD以上50PD未満の被験者層では無治療群と比べ本剤各群で統計学的に有意に減少した。投与前の斜視角が10PD以上20PD未満の被験者層では、本剤各群においてベースラインからの斜視角の減少がみられた。
    投与前の
    斜視角
    投与群
    投与前
    投与4週後注1)
    無治療群との群間差
    [95%信頼区間]
    p値
    10PD以上
    20PD未満
    無治療群
    16.17±2.754(3)
    2.33±6.602(3)
    1.25単位群
    15.00±1.414(4)
    -7.50±7.141(4)
    -9.83
    [-21.81, 2.14]
    0.091
    2.5単位群
    15.17±2.930(3)
    -3.75±2.475(2)
    -6.08
    [-20.39, 8.23]
    0.338
    20PD以上
    50PD未満
    無治療群
    33.75±8.760(10)
    -0.55±2.291(10)
    2.5単位群
    30.55±6.166(10)
    -13.40±15.105(10)
    -12.85
    [-24.46,-1.24]
    0.031
    5.0単位群
    35.27±9.152(11)
    -17.27±15.476(11)
    -16.72
    [-28.06,-5.38]
    0.005
    注1)ベースラインからの変化量
    斜視角(PD):平均値±標準偏差(例数)
    95%信頼区間及びp値は分散分析の併合分散を使用して算出(FisherのLSD法)
    また、続けて1外眼筋あたり本剤1.25~5.0単位を投与したとき、非遮蔽下にて評価した投与4週後の正面眼位における斜視角のベースラインからの変化量は、投与前の斜視角が10PD以上20PD未満の被験者層で-5.40±4.814(5例)、20PD以上50PD未満の被験者層で-10.95±6.950(10例)であった。
    本剤を投与された全症例における副作用発現頻度は27%(11/41例)であった。主な副作用は、眼瞼下垂17%(7/41例)、複視5%(2/41例)、斜視5%(2/41例)であった。
〈痙攣性発声障害〉
  1. 国内第Ⅱ/Ⅲ相試験
    国内8施設で内転型及び外転型痙攣性発声障害患者について実施された第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験の結果は下記のとおりである。
    内転型痙攣性発声障害患者22例を対象としたプラセボ対照二重盲検比較試験において、本剤2.5単位又はプラセボを片側の甲状披裂筋に投与したとき、主要評価項目である投与4週後の異常モーラ数のベースラインからの変化量は下表のとおりであり、プラセボ群と比べ本剤群で統計学的に有意な差が認められた(p=0.0148、共分散分析)。また、副次評価項目であるVoice Handicap Index(VHI)合計スコアの投与4週後のベースラインからの変化量は下表のとおりであり、プラセボ群と比べ本剤群で改善傾向が認められた。
    本剤群(11例)
    プラセボ群(11例)
    変化量の群間差注2)
    [95%信頼区間]
    投与前
    投与4週後注1)
    投与前
    投与4週後注1)
    異常モーラ数
    評価者1
    11.1±6.25
    -3.6±7.97
    11.6±6.34
    -0.5±3.91
    -3.3[-8.4, 1.7]
    評価者2
    20.5±4.27
    -7.0±8.04
    21.5±5.91
    0.2±1.66
    -7.2[-12.5, -1.8]
    評価者3
    19.7±5.57
    -7.3±7.64
    22.1±6.49
    -0.1±1.87
    -6.9[-12.0, -1.7]
    3人の中央値注3)
    19.2±4.51
    -7.0±7.63
    21.3±6.18
    -0.2±1.54
    -6.5[-11.6, -1.4]
    VHI注4)合計スコア
    78.5±18.86
    -24.0±31.94
    72.5±16.63
    -5.3±11.37
    -15.7[-36.4, 5.0]
    平均値±標準偏差
    注1)ベースラインからの変化量
    注2)ベースライン値を共変量とした共分散分析モデルに基づく。
    注3)規定の日本語を朗読中に異常が認められた拍数を3人の評価者が評価し、その中央値を代表値として主要評価項目の値として用いた。
    注4)音声障害の度合いに関する30の質問を被験者自身が5段階で評価した。
    また、二重盲検期に引き続いて片側又は両側の甲状披裂筋に1つの筋あたり本剤1.25~2.5単位を非盲検下で投与したとき、投与4週後の異常モーラ数及びVHI合計スコアの変化量(平均値±標準偏差)は、二重盲検期に本剤を投与された被験者において再投与1回時-6.4±8.13及び-25.4±32.91(9例)、再投与2回時-6.4±8.52及び-16.0±22.99(7例)であった。
    外転型痙攣性発声障害患者2例を対象とした非盲検試験において、本剤5.0単位を片側の後輪状披裂筋に投与したとき、それぞれの被験者におけるベースライン時の異常モーラ数は15及び7であり、投与4週後の変化量は-2及び1であった。
    内転型痙攣性発声障害患者で本剤を投与された全症例における副作用発現頻度は81.8%(18/22例)であった。主な副作用は、発声障害77.3%(17/22例)、嚥下障害40.9%(9/22例)であった。
    外転型痙攣性発声障害患者で本剤を投与された全症例における副作用発現頻度は50.0%(1/2例)であり、発声障害が1例に認められた。
〈過活動膀胱〉
  1. 国内第Ⅲ相試験
    国内53施設で既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない成人過活動膀胱患者248例を対象として実施したプラセボ対照二重盲検比較試験において、本剤100単位又はプラセボを排尿筋の20ヵ所に分割して投与した。治験薬投与1~3日前までに抗菌薬の投与を開始し、治験薬投与後1~3日間継続した。主要評価項目である1日あたりの尿失禁回数の投与12週後のベースラインからの変化量の群間差は下表のとおりであり、プラセボ群と比べ本剤群で統計学的に有意に改善した。副次評価項目である1日あたりの尿意切迫感回数、排尿回数及び切迫性尿失禁回数は下表のとおりであった。
    本剤群
    プラセボ群
    変化量の群間差
    [95%信頼区間]
    p値注1)
    投与前
    投与12週後
    投与前
    投与12週後
    1日あたりの
    尿失禁回数
    7.01±4.782
    (124)
    3.60±4.217
    (122)
    6.12±3.866
    (124)
    5.23±4.255
    (122)
    -2.16
    [-3.14, -1.18]
    p<0.001
    1日あたりの
    尿意切迫感
    回数
    9.18±4.780
    (124)
    5.77±4.713
    (122)
    9.54±4.175
    (124)
    8.47±5.060
    (122)
    -2.23
    [-3.31, -1.16]
    1日あたりの
    排尿回数
    12.20±3.712
    (124)
    10.23±3.644
    (122)
    12.72±3.333
    (124)
    12.34±3.981
    (122)
    -1.45
    [-2.24, -0.66]
    1日あたりの
    切迫性尿失禁回数
    6.56±4.722
    (124)
    3.43±4.217
    (122)
    5.71±3.535
    (124)
    5.05±4.131
    (122)
    -2.12
    [-3.07, -1.17]
    平均値±標準偏差(例数)
    注1)群間差、95%信頼区間及びp値は投与群、評価時点、ベースライン値、施設、投与群と評価時点の交互作用、及びベースライン値と評価時点の交互作用を固定効果としたmixed model for repeated measuresを用いて算出。1日あたりの尿意切迫感回数及び1日あたりの排尿回数はベースラインの切迫性尿失禁回数(10回以上又は9回以下)も固定効果に含めたmixed model for repeated measuresを用いて算出
    本剤を投与された全症例における副作用発現頻度は25%(59/232例)であった。主な副作用は、尿路感染7%(17/232例)、排尿困難6%(14/232例)、残尿量増加6%(14/232例)、尿閉5%(12/232例)であった。なお、二重盲検期の本剤群における有害事象の尿閉の発現頻度は6%(7/124例)であり、尿閉又は残尿量増加のために導尿注2)を開始した症例の割合は6%(7/124例)であった。
    注2)残尿量が350mL以上の場合、又は残尿量200mL以上350mL未満で自覚症状があり、治験担当医師が必要と判断した場合に導尿を開始することとした。
〈神経因性膀胱〉
  1. 国内第Ⅲ相試験
    国内12施設で既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない成人神経因性膀胱患者21例を対象として実施したプラセボ対照二重盲検比較試験において、本剤200単位又はプラセボを排尿筋の30ヵ所に分割して投与した。治験薬投与1~3日前までに抗菌薬の投与を開始し、治験薬投与後1~3日間継続した。ただし、尿路感染があると判断された場合には、適切な抗菌薬を治験薬投与5日間以上前から開始し、治験薬投与後3日間以上継続した。主要評価項目である1日あたりの尿失禁回数の投与6週後のベースラインからの変化量の群間差は下表のとおりであり、プラセボ群と比べ本剤群で改善が認められた。
    本剤群
    プラセボ群
    変化量の群間差
    [95%信頼区間]注1)
    投与前
    投与6週後
    投与前
    投与6週後
    1日あたりの
    尿失禁回数
    3.91±2.034
    (11)
    0.79±1.098
    (11)
    5.17±2.626
    (10)
    4.90±4.987
    (10)
    -3.02
    [-5.85, -0.19]
    平均値±標準偏差(例数)
    注1)群間差及び95%信頼区間は投与群、評価時点、ベースライン値、投与群と評価時点の交互作用、及びベースライン値と評価時点の交互作用を固定効果としたmixed model for repeated measuresを用いて算出
    本剤を投与された全症例における副作用発現頻度は5%(1/21例)であり、尿閉が1例に認められた。なお、二重盲検期の本剤群における有害事象の尿閉の発現頻度は9%(1/11例)であり、治験開始時に自排尿のみで管理されていた1例は投与後に尿閉のために導尿注2)を開始した。
    注2)残尿量が350mL以上の場合、又は残尿量200mL以上350mL未満で自覚症状があり、治験担当医師が必要と判断した場合に導尿を開始することとした(膀胱の知覚麻痺により症状を自覚できない被験者では、治験担当医師が必要と判断した場合に導尿を開始することとした)。
  2. 海外第Ⅲ相試験
    海外100施設で既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない成人神経因性膀胱患者416例を対象として実施したプラセボ対照二重盲検比較試験において、本剤300単位注1)、200単位又はプラセボを排尿筋の30ヵ所に分割して投与した。治験薬投与3日前までに抗菌薬の投与を開始し、治験薬投与後3日間以上継続した。ただし、尿路感染があると判断された場合には、適切な抗菌薬を治験薬投与5日間以上前から開始し、治験薬投与後3日間以上継続した。主要評価項目である1週間あたりの尿失禁回数の投与6週後のベースラインからの変化量の群間差は下表のとおりであり、プラセボ群と比べ本剤群で統計学的に有意に改善した。
    注1)承認外の用量
    本剤200単位群
    プラセボ群
    変化量の群間差
    [95%信頼区間]
    p値注2)
    投与前
    投与6週後
    投与前
    投与6週後
    1週間あたりの
    尿失禁回数
    32.3±22.76
    (135)
    11.2±19.79
    (135)
    28.3±15.82
    (149)
    19.4±17.35
    (149)
    -9.29
    [-13.16, -5.42]
    p<0.001
    平均値±標準偏差(例数)
    注2)群間差、95%信頼区間及びp値はベースライン値を共変量、投与群、組入れ時の原因疾患(脊髄損傷又は多発性硬化症)、スクリーニング時の抗コリン薬の使用の有無及び治験責任医師を因子とした共分散分析モデルを用いて算出
    本剤200単位群の試験全体における副作用発現頻度は31.1%(42/135例)であった。主な副作用は、尿閉20.0%(27/135例)、尿路感染5.2%(7/135例)であった。なお、二重盲検期の本剤200単位群における有害事象の尿閉の発現頻度は20.0%(27/135例)であり、治験開始時に導尿を使用していなかった症例のうち、尿閉のために導尿注3)を開始した症例の割合は、本剤200単位群で35.0%(21/60例)であった。
    注3)導尿の開始基準は設定されていなかった。
  3. 海外第Ⅲ相試験
    海外81施設で既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない成人神経因性膀胱患者275例を対象として実施したプラセボ対照二重盲検比較試験において、本剤300単位注1)、200単位又はプラセボを排尿筋の30ヵ所に分割して投与した。治験薬投与3日前までに抗菌薬の投与を開始し、治験薬投与後3日間以上継続した。ただし、尿路感染があると判断された場合には、適切な抗菌薬を治験薬投与5日間以上前から開始し、治験薬投与後3日間以上継続した。主要評価項目である1週間あたりの尿失禁回数の投与6週後のベースラインからの変化量の群間差は下表のとおりであり、プラセボ群と比べ本剤群で統計学的に有意に改善した。
    注1)承認外の用量
    本剤200単位群
    プラセボ群
    変化量の群間差
    [95%信頼区間]
    p値注2)
    投与前
    投与6週後
    投与前
    投与6週後
    1週間あたりの
    尿失禁回数
    32.5±18.44(92)
    10.8±19.48(92)
    36.7±30.67(92)
    23.5±23.47(92)
    -9.04
    [-14.77, -3.32]
    p=0.002
    平均値±標準偏差(例数)
    注2)群間差、95%信頼区間及びp値はベースライン値を共変量、投与群、組入れ時の原因疾患(脊髄損傷又は多発性硬化症)、スクリーニング時の抗コリン薬の使用の有無及び治験責任医師を因子とした共分散分析モデルを用いて算出
    本剤200単位群の試験全体における副作用発現頻度は33.0%(30/91例)であった。主な副作用は、尿閉20.9%(19/91例)、尿路感染9.9%(9/91例)であった。なお、二重盲検期の本剤200単位群における有害事象の尿閉の発現頻度は19.8%(18/91例)であり、治験開始時に導尿を使用していなかった症例のうち、尿閉のために導尿注3)を開始した症例の割合は、本剤200単位群で25.0%(11/44例)であった。
    注3)導尿の開始基準は設定されていなかった。

薬効薬理

作用機序
末梢の神経筋接合部における神経終末内でのアセチルコリン放出抑制により神経筋伝達を阻害し、筋弛緩作用を示す。神経筋伝達を阻害された神経は、軸索側部からの神経枝の新生により数ヵ月後には再開通し、筋弛緩作用は消退する。
また、エクリン汗腺は主にコリン作動性神経により調節されていることから、本薬はコリン作動性神経及び汗腺の接合部において、神経終末内でのアセチルコリン放出抑制により神経伝達を阻害し、発汗を抑制すると考えられる。
坐骨神経腓腹筋の収縮に対する作用
ラット大腿二頭筋に投与した試験において、坐骨神経刺激による腓腹筋収縮の抑制を認める。
筋弛緩作用
マウス片側腓腹筋に投与した尾懸下試験において、投与後比較的早期に、本剤の筋弛緩作用に基づく運動力の低下及び不動時間の延長を用量依存的に認める。
α及びγ運動ニューロンに対する機能的除神経作用
ラット大腿二頭筋に投与した試験において、錘外筋及び筋紡錘(錘内筋)で機能的除神経作用を認める。
神経再生による機能的除神経からの回復
ラット大腿二頭筋に投与した試験において、α及びγ運動ニューロンに対する機能的除神経惹起後、錘外筋及び筋紡錘(錘内筋)ともに終板の拡大を認める。

有効成分に関する理化学的知見

一般的名称
A型ボツリヌス毒素(Botulinum Toxin Type A)
性状
振り混ぜるとき、白濁する。

承認条件

  1. 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
  2. 本剤についての講習を受け、本剤の安全性及び有効性を十分に理解し、本剤の施注手技に関する十分な知識・経験のある医師によってのみ用いられるよう、必要な措置を講じること。
  3. 本剤の使用後に失活・廃棄が安全・確実に行われるよう、廃棄については薬剤部に依頼する等、所要の措置を講じ、廃棄に関する記録を保管すること。

包装

〈ボトックス注用 50単位〉
1バイアル
〈ボトックス注用100単位〉
1バイアル

主要文献

1
藤本智子ほか:日皮会誌.2015;125(7):1379-1400
2
「痙攣性発声障害の診断基準および重症度分類の策定に関する研究」班:痙攣性発声障害 診断基準および重症度分類.http://www.jslp.org/index.htm
3
社内資料:毒性試験(2019年12月20日承認、CTD2.6.6.9.1.2)
4
社内資料:分布・排泄に関する試験
5
岩重博康ほか:日眼会誌.1995;99(6):663-668
6
丸尾敏夫ほか:眼科臨床医報.1995;89(3):340-344
7
目崎高広ほか:脳と神経.1999;51(5):427-432
8
目崎高広ほか:脳と神経.1995;47(8):749-754
9
目崎高広ほか:脳と神経.1995;47(9):857-862
10
Kaji R,et al.:Curr Med Res Opin. 2010;26(8):1983-1992
11
Abo M,et al.:Toxins.2020;12(2):127
12
Kaji R,et al.:J Neurol. 2010;257(8):1330-1337
13
大嶋雄一郎ほか:西日皮膚.2013;75(4):357-364
14
Yokoyama O,et al.:Int J Urol.2020;27(3):227-234
15
Campanati A,et al.:Clin Ther.2003;25(1):298-308
16
社内資料:薬効薬理試験
17
Aoki KR,et al.:Eur J Neurol.1995;2:3-9
18
社内資料:薬効薬理試験

文献請求先及び問い合わせ先

グラクソ・スミスクライン株式会社
東京都港区赤坂1-8-1
カスタマー・ケア・センター
TEL:0120-561-007(9:00~17:45/土日祝日及び当社休業日を除く)
FAX:0120-561-047(24時間受付)

製造販売業者等

製造販売元
グラクソ・スミスクライン株式会社
東京都港区赤坂1-8-1
http://jp.gsk.com

(参考情報)

残った薬液は、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液を加えて失活させます。
失活後、密閉可能な廃棄袋又は箱に廃棄してください。
薬液の触れた器具等も同様に0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液を加えて失活させた後、密閉可能な廃棄袋又は箱に廃棄してください。

先発薬

後発薬

                                                                                                                                                                                                       

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