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閲覧履歴

オレンシア点滴静注用250mg

T細胞選択的共刺激調節剤

1瓶 54444円

添付文書番号

3999429D1021_1_13

企業コード

670605

作成又は改訂年月

2022年7月改訂
(第2版、再審査結果)

日本標準商品分類番号

873999

薬効分類名

T細胞選択的共刺激調節剤

承認等

販売名

オレンシア点滴静注用250mg

販売名コード

3999429D1021

販売名英字表記

ORENVCIA FOR I.V. INFUSION

販売名ひらがな

おれんしあてんてきじょうちゅうよう250mg

承認番号等

承認番号
22200AMX00863000

販売開始年月

2010年9月

貯法、有効期間

貯法
2〜8℃で保存
有効期間
36ヵ月

規制区分

劇薬
処方箋医薬品 注1)
注1)注意―医師等の処方箋により使用すること
生物由来製品

一般的名称

アバタセプト(遺伝子組換え)

警告

  1. 本剤を投与された患者に,重篤な感染症等があらわれることがある。敗血症,肺炎,真菌感染症を含む日和見感染症等の致命的な感染症が報告されているため,十分な観察を行うなど感染症の発現に注意すること。また,本剤との関連性は明らかではないが,悪性腫瘍の発現も報告されている。本剤が疾病を完治させる薬剤でないことも含め,これらの情報を患者に十分説明し,患者が理解したことを確認した上で,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。また,本剤の投与において,重篤な副作用により,致命的な経過をたどることがあるので,緊急時に十分に措置できる医療施設及び医師のもとで投与し,本剤投与後に副作用が発現した場合には,担当医に連絡するよう患者に注意を与えること。
  2. 本剤の治療を行う前に,少なくとも1剤の抗リウマチ薬の使用を十分勘案すること。また,本剤についての十分な知識と適応疾患の治療の経験をもつ医師が使用すること。

禁忌(次の患者には投与しないこと)

  1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  2. 重篤な感染症の患者[症状を悪化させるおそれがある。]

組成・性状

組成

オレンシア点滴静注用250mg
成分
1バイアル中の分量
有効成分
アバタセプト(遺伝子組換え)
250mg
添加剤
マルトース水和物
500mg
リン酸二水素ナトリウム一水和物
17.2mg
その他,等張化剤及びpH調節剤を含有する。
調製専用シリンジ
本剤はチャイニーズハムスター卵巣細胞を用いて製造される。

製剤の性状

オレンシア点滴静注用250mg
pH7.2~7.8[25mg/mL日局注射用水]
外観
白色〜微黄白色の塊又は粉末(凍結乾燥製剤)
浸透圧比
(生理食塩液に対する比)
約0.8[25mg/mL日局注射用水]

効能又は効果

既存治療で効果不十分な下記疾患
  • 関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)
  • 多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎

効能又は効果に関連する注意

〈効能共通〉
  1. 過去の治療において,少なくとも1剤の抗リウマチ薬による適切な治療を行っても,効果不十分な場合に投与すること。
〈多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉
  1. 若年性特発性関節炎のうち全身型若年性特発性関節炎については,全身症状に対する有効性及び安全性は確立していないので,全身症状が安定し,多関節炎が主症状の場合に投与すること。

用法及び用量

〈関節リウマチ〉
通常,成人にはアバタセプト(遺伝子組換え)として以下の用量を1回の投与量とし点滴静注する。初回投与後,2週,4週に投与し,以後4週間の間隔で投与を行うこと。
患者の体重
投与量
バイアル数
60kg未満
500mg
2バイアル
60kg以上100kg以下
750mg
3バイアル
100kgを超える
1g
4バイアル
〈多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉
通常,アバタセプト(遺伝子組換え)として1回10mg/kg(体重)を点滴静注する。初回投与後,2週,4週に投与し,以後4週間の間隔で投与を行うこと。
ただし,体重75kg以上100kg以下の場合は1回750mg,体重100kgを超える場合は1回1gを点滴静注すること。

用法及び用量に関連する注意

  1. 本剤と抗TNF製剤の併用は行わないこと。海外で実施したプラセボを対照とした臨床試験において,本剤と抗TNF製剤の併用療法を受けた患者では併用による効果の増強は示されておらず,感染症及び重篤な感染症の発現率が抗TNF製剤のみによる治療を受けた患者での発現率と比べて高かった。また,本剤と他の生物製剤の併用について,有効性及び安全性は確立していないので,併用を避けること。

重要な基本的注意

  1. 抗TNF製剤等の生物製剤から本剤に切り替える際には,感染症の徴候について患者の状態を十分に観察すること。
  2. 本剤を含む免疫系に影響を及ぼす薬剤において,感染症に対する宿主の感染防御機構に影響を及ぼす可能性がある。
    1. 本剤投与中は,十分な観察を行い新たな感染症の発現に注意すること。
    2. 本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部レントゲン検査に加え,インターフェロンγ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い,適宜胸部CT検査等を行うことにより,結核感染の有無を確認すること。また,本剤投与中も,胸部レントゲン検査等の適切な検査を定期的に行うなど結核症の発現には十分に注意し,患者に対し,結核を疑う症状が発現した場合(持続する咳,発熱等)には速やかに担当医に連絡するよう説明すること。なお,結核の活動性が確認された場合は本剤を投与しないこと。
    3. 抗リウマチ生物製剤によるB型肝炎ウイルスの再活性化が報告されている。本剤投与に先立って肝炎ウイルス感染の有無を確認すること。
  3. 本剤を含む免疫系に影響を及ぼす薬剤において,悪性腫瘍に対する宿主の感染防御機構に影響を及ぼす可能性がある。また,臨床試験において,悪性腫瘍の発現が報告されている。本剤に起因するか明らかではないが,悪性腫瘍の発現には注意すること。
  4. 本剤投与中及び投与中止後3ヵ月間は,生ワクチン接種により感染する潜在的リスクがあるので,生ワクチン接種を行わないこと。また,一般に本剤を含む免疫系に影響を及ぼす薬剤は,予防接種の効果を低下させる可能性がある。
  5. 本剤投与により既存の乾癬の悪化又は新規発現が惹起される可能性がある。既存の乾癬の悪化及び新規発現に注意し,必要に応じて適切な処置を行うこと。

特定の背景を有する患者に関する注意

合併症・既往歴等のある患者

  1. 感染症(重篤な感染症を除く)の患者又は感染症が疑われる患者(感染症の再発を繰り返す患者,慢性,潜在性の感染又は局所感染がある患者等)
    感染症の発現や増悪に十分注意すること。
  2. 結核の既感染者(特に結核の既往歴のある患者及び胸部レントゲン上結核治癒所見のある患者)又は結核感染が疑われる患者
    1. 結核の既感染者では,結核を活動化させる可能性が否定できない。
    2. 結核の既往歴を有する場合及び結核感染が疑われる場合には,結核の診療経験がある医師に相談すること。以下のいずれかの患者には,原則として抗結核薬を投与した上で,本剤を投与すること。
      • 胸部画像検査で陳旧性結核に合致するか推定される陰影を有する患者
      • 結核の治療歴(肺外結核を含む)を有する患者
      • インターフェロンγ遊離試験やツベルクリン反応検査などの検査により,既感染が強く疑われる患者
      • 結核患者との濃厚接触歴を有する患者
  3. 易感染性の状態にある患者
    感染症を誘発するおそれがある。
  4. B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者(HBs抗原陰性,かつHBc抗体又はHBs抗体陽性)
    患者の臨床症状と臨床検査値の観察を十分に行い,B型肝炎の再燃の徴候に注意すること。なお,臨床試験では,ウイルス肝炎のスクリーニング検査で陽性であった患者は試験対象から除外された。
  5. 間質性肺炎の既往歴のある患者
    定期的に問診を行うなど,注意すること。間質性肺炎が増悪又は再発することがある。
  6. 慢性閉塞性肺疾患のある患者
    慢性閉塞性肺疾患の増悪や気管支炎を含む重篤な副作用が発現したとの報告がある。

妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット及びウサギ)において本剤の胎盤通過性が認められている。また,動物実験では最高投与量(マウスで300mg/kg,ラット及びウサギで200mg/kg)まで催奇形性は認められなかったが,投与量200mg/kg(ヒトに10mg/kg投与した場合の全身曝露量(AUC)の11倍のAUC)でラット雌出生児に自己免疫様の所見が認められている。

授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し,授乳の継続又は中止を検討すること。ヒト母乳中への移行については不明である。動物実験(ラット)で本剤の乳汁移行が認められている。

小児等

  1. 本剤投与前に必要なワクチンを接種しておくことが望ましい。
  2. 低出生体重児,新生児,乳児及び5歳未満の幼児に投与した国内臨床試験成績は得られていない。

高齢者

患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与し,適宜減量も考慮すること。一般に生理機能が低下している。

副作用

次の副作用があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

重大な副作用

  1. 重篤な感染症
    敗血症(0.1%),肺炎(ニューモシスチス肺炎を含む)(0.9%),蜂巣炎(0.4%),局所感染(0.1%未満),尿路感染(0.3%),気管支炎(1.2%),憩室炎(0.1%未満),急性腎盂腎炎(0.1%未満)等の重篤な感染症があらわれることがあり,致命的な経過をたどることがある。重篤な感染症の多くは,免疫抑制療法を併用している患者において認められている。
  2. 重篤な過敏症
    ショック,アナフィラキシー(0.1%未満)及び低血圧,蕁麻疹,呼吸困難等の重篤な過敏症があらわれることがある。
  3. 間質性肺炎(0.4%)
    発熱,咳嗽,呼吸困難等の呼吸器症状に十分注意し,異常が認められた場合には,速やかに胸部レントゲン検査,胸部CT検査及び血液ガス検査等を実施し,本剤の投与を中止するとともに適切な処置を行うこと。

その他の副作用

1%以上
0.1~1%未満
0.1%未満
頻度不明
血液・リンパ系
白血球増加,リンパ球減少,白血球減少,血小板減少,好中球減少,好酸球増加,貧血,鉄欠乏性貧血
赤芽球癆
精神・神経系
頭痛,浮動性めまい,睡眠障害(不眠症を含む),末梢性ニューロパチー
錯感覚,うつ病,味覚異常,片頭痛,脳梗塞,脳炎
不安
結膜炎,眼乾燥,角膜炎,結膜出血
麦粒腫,眼瞼炎,眼痛,細菌性結膜炎
視力低下
回転性めまい,中耳炎
耳鳴,耳不快感
循環器
血圧上昇,血圧低下,高血圧,動悸
徐脈,潮紅,頻脈,低血圧,ほてり,上室性期外収縮
呼吸器
上気道感染(鼻咽頭炎を含む),上気道の炎症,下気道感染(気管支炎を含む)
咳嗽,鼻炎,副鼻腔炎,鼻漏,口腔咽頭痛,アレルギー性鼻炎
気管支痙攣,咽頭膿瘍,高炭酸ガス血症,鼻閉
咽頭絞扼感
消化器
口内炎
悪心,下痢,胃炎,腹痛,便秘,嘔吐,胃腸炎,齲歯,歯周炎,胃潰瘍,胃ポリープ,腹部不快感,腸炎,感染性腸炎,歯肉炎,逆流性食道炎
消化不良,アフタ性口内炎,歯感染,歯周病,舌炎,口唇炎,胃腸出血,歯痛,口腔内潰瘍形成
皮膚
発疹(湿疹,痒疹,紅斑を含む)
爪真菌症,白癬感染,爪囲炎,蕁麻疹,乾癬
脱毛症,ざ瘡,皮膚嚢腫,毛包炎,膿皮症,皮下組織膿瘍,発汗障害,白血球破砕性血管炎,爪の障害
感染性皮膚潰瘍,皮膚乾燥,挫傷発生の増加傾向,多汗症
筋・骨格系
筋痙縮,背部痛
関節痛,骨髄炎,細菌性関節炎
四肢痛
生殖器
無月経,月経過多
泌尿器
尿中白血球陽性,膀胱炎,尿中赤血球陽性,尿中血陽性,BUN増加,尿中ブドウ糖陽性,血中クレアチニン増加,尿中蛋白陽性,腎盂腎炎
膿尿,頻尿,血尿,排尿困難
代謝
血中カリウム減少,血中ブドウ糖増加,高コレステロール血症
高脂血症,血中コレステロール増加,糖尿病,血中カリウム増加
肝臓
ALT増加,AST増加,γ-GTP増加,脂肪肝,血中アルカリホスファターゼ増加,胆嚢ポリープ
胆石症,血中ビリルビン増加,胆管炎
投与部位
注射部位反応(そう痒感,紅斑,疼痛,丘疹,発疹等)
抵抗機構
帯状疱疹
ヘルペスウイルス感染,口腔ヘルペス,真菌感染,インフルエンザ
単純ヘルペス,創傷感染,水痘
インフルエンザ様疾患,パルボウイルス感染
その他
異常感,倦怠感,発熱,季節性アレルギー,末梢性浮腫,低体温
無力症,体重増加,胸痛,体重減少,総蛋白減少,胸部不快感,食欲不振
疲労
注)発現頻度は使用成績調査及び皮下注製剤の臨床試験を含む

臨床検査結果に及ぼす影響

本剤は添加剤としてマルトースを含有している。グルコース脱水素酵素(GDH)法を用いた血糖測定法ではマルトースが測定結果に影響を与え,実際の血糖値よりも高値を示す場合があることが報告されている。本剤を投与されている患者の血糖値の測定には,マルトースの影響を受ける旨の記載がある血糖測定用試薬及び測定器は使用しないこと。

適用上の注意

薬剤調製時の注意
  1. 本剤の溶液中に浮遊物が生じることがあるため,本剤をシリコーン油が塗布されたシリンジを用いて調製しないこと。シリコーン油が塗布されたシリンジを用いて調製した溶液は廃棄すること。
  2. 溶解方法
    本剤に添付されたシリコーン油を塗布していない専用のディスポーザブルシリンジ及び18~21Gの注射針を用いて,本剤1バイアル当たり10mLの日局注射用水(日局生理食塩液も使用可)で溶解してアバタセプト(遺伝子組換え)25mg/mLの濃度とする。
    1. 本剤のバイアルのフリップオフキャップを外し,ゴム栓表面をエタノール綿で清拭する。
    2. 注射針をゴム栓の中央に刺入し,1バイアル当たり10mLの日局注射用水(日局生理食塩液も使用可)をバイアルの壁面に沿って流れるように静かに注入する。その際に陰圧状態でないバイアルは使用しないこと。
    3. 内容物を泡立てないように注意し,バイアルを緩やかに渦をまくように回転させて完全に溶解する。決して激しく振らず,長時間振り混ぜないこと。
    4. 完全に溶解した後,泡立ちがある場合にはバイアル内に針で通気して泡を消散させる。溶解後の液は,無色から微黄色の澄明な液である(微粒子,変色,異物を認めたものは使用しないこと)。
  3. 希釈方法
    1. 溶解後速やかに総液量約100mLとなるように以下の方法で日局生理食塩液で希釈する。
      • あらかじめ日局生理食塩液100mLの点滴バッグ又はボトルから,注入する溶解液と同じ容量分を抜き取っておく。
      • 本剤に添付されたシリコーン油を塗布していない専用のディスポーザブルシリンジ及び18~21Gの注射針を用いて,必要量の溶解液をバイアルから採取し,点滴バッグ又はボトルに緩徐に注入し,緩やかに混和する。バイアル中の残液は廃棄すること。
    2. 希釈液に微粒子や変色がないか目視で確認すること。微粒子又は変色が認められた場合は希釈液を使用しないこと。
    3. 希釈後は速やかに使用すること。なお,希釈後やむをえず保存する場合は,2~25℃で保存し,24時間以内に使用すること。
薬剤投与時の注意
  1. 本剤の希釈液の全量を30分かけて点滴静注する。
  2. 本剤は,無菌・パイロジェンフリーで蛋白結合性の低い0.2〜1.2ミクロンのメンブランフィルターを用いたインラインフィルターを通して投与すること。
  3. 本剤は,独立したラインにより投与するものとし,他の注射剤・輸液等と混合しないこと。

その他の注意

臨床使用に基づく情報
  1. 本剤の臨床試験は,国内では37.7ヵ月(長期試験の投与期間1.0~45.1ヵ月の中央値)まで,海外では42.9ヵ月(長期試験の投与期間1.9~71.9ヵ月の中央値)までの期間で実施されており,これらの期間を超えた本剤の長期投与時の安全性は確立していない。
  2. 本剤単剤投与での使用経験は限られている。
  3. 本剤投与後,本剤に対する抗体が産生されることがある。海外臨床試験において投与期間として最長8年間,本剤による治療を行った関節リウマチ患者3,985例について本剤に対する抗体の発現を評価したところ,投与期間中の抗体陽性率は3,877例中187例(4.8%),投与中断又は中止した患者における最終投与後43日以降の抗体陽性率は1,888例中103例(5.5%)であった。また,評価が可能であった48例中22例に中和抗体活性が認められている。国内臨床試験では,投与期間中の抗体陽性率が231例中7例(3.0%),投与中断(最長約3年)又は中止例を含めた全体の陽性率が231例中33例(14.3%)であり,評価が可能であった25例中8例に中和抗体活性が認められている。なお,抗体の発現と効果又は有害事象との関連は明らかではない。
  4. 海外において,JCウイルスの発現は確認されていないものの本剤投与中に進行性多巣性白質脳症(PML)を再発した症例が市販後に報告されている。
  5. 本剤とタクロリムス等のカルシニューリン阻害薬との併用について,安全性は確立していない。
  6. 海外における関節リウマチ患者を対象としたプラセボ対照試験において,悪性腫瘍の発現率は,本薬を投与(中央値12ヵ月)した2,111例のうち29例(1.4%)で,プラセボを投与した1,099例のうち12例(1.1%)と同様であった。二重盲検試験及び非盲検試験において,本薬を投与した6,028例(16,671人・年)における悪性腫瘍の発現率は,100人・年当たり1.35であり,7年間ほぼ一定であった。このうち,黒色腫以外の皮膚癌が0.64,固形癌が0.62及び悪性血液疾患が0.10であった。主な固形癌は肺癌(0.14/100人・年)であり,主な悪性血液疾患はリンパ腫(0.06/100人・年)であり,7年間ほぼ一定であった。二重盲検試験及び非盲検試験の累積データにおける,悪性腫瘍全体の発現率,主な癌種別(黒色腫以外の皮膚癌,固形癌及び悪性血液疾患)の発現率,個々の癌種の発現率はいずれも二重盲検試験と同様であった。なお,これらの悪性腫瘍の発現率は関節リウマチ患者から予測されるものと一致していた。
非臨床試験に基づく情報
  1. マウスのがん原性試験(投与量20,65及び200mg/kgで週1回,雄:84週間・雌:88週間,皮下投与)において,リンパ腫及び雌マウスの乳腺腫瘍の発生率上昇が報告されている。これら腫瘍の発生には,マウス白血病ウイルス及びマウス乳癌ウイルスと本剤の免疫抑制作用との関連が示唆されている。

薬物動態

血中濃度

〈関節リウマチ〉
関節リウマチ患者に本剤2~16mg/kgを30分かけて単回点滴静注したときの薬物動態パラメータを表1に示す。アバタセプトの薬物動態は線形性を示し,半減期(t1/2)は約10日であった。
表1 関節リウマチ患者にアバタセプトを単回投与したときの薬物動態パラメータ
投与量
(mg/kg)
Cmaxa
(µg/mL)
AUCa,b
(µg·h/mL)
t1/2c
(日)
CLc
(mL/h/kg)
Vssc
(L/kg)
2
(n=6)
36
(24)
4509
(36)
8.8
(3.2)
0.46
(0.15)
0.11
(0.02)
8
(n=7)
161
(14)
21330
(23)
9.5
(2.6)
0.38
(0.09)
0.10
(0.02)
16
(n=6)
318
(43)
46065
(44)
10.3
(4.5)
0.37
(0.16)
0.12
(0.06)
a 幾何平均値(変動係数%)
b 0時間から無限大時間までの血清中濃度曲線下面積
c 算術平均値(標準偏差)
初回投与後2及び4週の負荷投与により,アバタセプトの血清中濃度は速やかに定常状態を超える濃度に達し,以後4週間隔の投与開始3回目までに定常状態に到達した。また,関節リウマチ患者から得られた血清中濃度データを用いて,母集団薬物動態解析を実施した。本剤を承認された用法及び用量で反復点滴静注したときの定常状態時の薬物動態パラメータ推定値を表2に示す。定常状態における各患者(216例)のトラフ濃度(Cmin)推定値の平均値±標準偏差は24±10µg/mLであった。アバタセプトの薬物動態に対する年齢及び性別の影響はみられなかったが,クリアランスの変動要因として体重及び糸球体ろ過率(GFR)が選択された。体重別固定用量により用量を調整した場合,臨床上重要な体重の影響は認められていない。
表2 臨床用量で関節リウマチ患者にアバタセプトを反復投与したときの定常状態時の薬物動態パラメータ推定値(母集団薬物動態解析)
薬物動態パラメータ推定値の算術平均値±標準偏差
CL
(mL/h/kg)
AUC
(µg·h/mL)
Cmax
(µg/mL)
Cmin
(µg/mL)
0.30±0.08
48475±12631
236±43
24±10
〈多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉
多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎患者に,本剤を承認された用法及び用量で反復点滴静注したとき,初回投与後2及び4週の負荷投与により,アバタセプトの血清中濃度は速やかに定常状態を超える濃度に達し,以後4週間隔の投与開始2回目までに定常状態に到達した。また,日本人を含む関節リウマチ患者及び多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎患者から得られた血清中濃度データを用いて,母集団薬物動態解析を実施した。本剤を承認された用法及び用量で反復点滴静注したときの定常状態における日本人の薬物動態パラメータ推定値(20例)を表3に示す。定常状態におけるCmin推定値の幾何平均値(変動係数%)は14.4µg/mL(33.7%)であった。
表3 多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎患者にアバタセプトを反復投与したときの定常状態における日本人の薬物動態パラメータ推定値(母集団薬物動態解析)
薬物動態パラメータ推定値の幾何平均値(変動係数%)
CL
(mL/h/kg)
AUC
(µg·h/mL)
Cmax
(µg/mL)
Cmin
(µg/mL)
0.346 (26.3)
28837 (23.6)
168 (17.9)
14.4 (33.7)

臨床成績

有効性及び安全性に関する試験

〈関節リウマチ〉
  1. 国内第II相試験
    メトトレキサートに効果不十分な関節リウマチ患者を対象とした,メトトレキサート併用下(6~8mg/週),プラセボ対照二重盲検比較試験における6ヵ月後のACR改善基準20%における有効率(ACR20)を表1に示す。本剤投与群におけるACR20は,プラセボ群に比較して有意に高かった(p<0.001)。
    表1 ACR20(国内第Ⅱ相試験)
    本剤投与群b
    プラセボ群
    10mg/kg
    2mg/kg
    ACR20a(%)
    77.0
    62.7
    21.2
    改善例数/有効性評価例数
    47/61
    42/67
    14/66
    プラセボ群との差
    [95%信頼区間]
    55.8
    [41.4, 70.3]
    41.5
    [26.3, 56.7]
    -
    p値
    p<0.001c
    p<0.001c
    -
    a ACRコアセットのうち,総疼痛関節数及び総腫脹関節数がともに20%以上改善し,かつ残りの5項目中3項目が20%以上改善した症例の割合。
    b 本剤の承認用量は,10mg/kgに相当する体重別固定用量(体重60kg未満:500mg,体重60kg以上100kg以下:750mg,体重100kgを超える:1g)である。
    c カイ二乗検定(連続修正あり)
    副作用発現頻度は,10mg/kg投与群で49.2%(30/61例),2mg/kg投与群で59.7%(40/67例)であった。主な副作用は,10mg/kg群で鼻咽頭炎14.8%(9/61例),上気道の炎症6.6%(4/61例),頭痛,口内炎,浮動性めまい,湿疹,体重減少 各3.3%(2/61例),2mg/kg群で鼻咽頭炎20.9%(14/67例),頭痛6.0%(4/67例),膀胱炎,血圧上昇,上気道の炎症 各4.5%(3/67例),口内炎,浮動性めまい,異常感,足部白癬,咳嗽,咽喉頭疼痛,舌炎,潮紅,高血圧 各3.0%(2/67例)であった。
  2. 国内第Ⅳ相試験
    メトトレキサートに効果不十分な関節リウマチ患者を対象とした,メトトレキサート併用下(6mg/週以上),プラセボ対照二重盲検比較試験における4ヵ月後のACR20を表2に示す。本剤投与群におけるACR20は,プラセボ群に比較して有意に高かった(p<0.001)。
    表2 ACR20(国内第Ⅳ相試験)
    本剤投与群
    プラセボ群
    ACR20a(%)
    75.4
    27.7
    改善例数/有効性評価例数
    153/203
    56/202
    プラセボ群との差
    [95%信頼区間]
    p値b
    47.6
    [38.6, 56.7]
    p<0.001
    -
    a ノンレスポンダー補完法
    b カイ二乗検定(連続修正あり)
    6ヵ月後の関節破壊進行を手及び足のX線スコア(modified Total Sharp Score:mTSS)で評価した結果を表3に示す。本剤投与群におけるmTSSのベースラインからの変化量は,プラセボ群に比較して有意に低かった(p=0.017)。
    表3 6ヵ月時におけるmTSSのベースラインからの変化量(ITT集団,線形外挿法)(国内第Ⅳ相試験)
    本剤投与群
    プラセボ群
    ベースライン
    11.34±19.87
    (203)
    10.73±14.37
    (202)
    6ヵ月時
    12.23±20.42
    (201)
    12.02±15.08
    (199)
    ベースラインからの変化量
    0.84±3.48
    (201)
    1.26±3.61
    (199)
    プラセボ群との差
    [95%信頼区間]
    p値a,b
    -0.42
    [-1.12, 0.27]
    p=0.017
    -
    平均値±標準偏差(例数)
    a ベースラインからの変化量の順位をVan der Waerdenの正規化変換した値を目的変数とし,投与群,ベースライン値の順位を説明変数とした共分散分析モデル
    b 有意水準両側5%
    本剤投与群における副作用発現頻度は,42.9%(87/203例)であった。主な副作用は,鼻咽頭炎,肝機能異常 各7.4%(15/203例),口内炎6.9%(14/203例)であった。
  3. 海外第Ⅲ相試験(メトトレキサートに効果不十分な患者)
    メトトレキサートに効果不十分な関節リウマチ患者を対象に,本剤を承認された用量で投与した,メトトレキサート併用下(15mg/週以上),プラセボ対照二重盲検比較試験(AIM試験)における6ヵ月後のACR20を表4に示す。本剤投与群におけるACR20は,プラセボ群に比較して有意に高かった(p<0.001)。
    表4 ACR20(海外第Ⅲ相試験)
    AIM試験
    本剤投与群
    プラセボ群
    ACR20a(%)
    67.9
    39.7
    改善例数/有効性評価例数
    288/424
    85/214
    プラセボ群との差
    [95%信頼区間]
    28.2
    [19.8, 36.7]
    -
    p値
    p<0.001b
    -
    a ACRコアセットのうち,総疼痛関節数及び総腫脹関節数がともに20%以上改善し,かつ残りの5項目中3項目が20%以上改善した症例の割合。
    b カイ二乗検定(連続修正あり)
    本剤投与群における副作用発現頻度は,49.4%(214/433例)であった。主な副作用は,頭痛9.5%(41/433例),悪心6.7%(29/433例),浮動性めまい4.4%(19/433例),上気道感染4.2%(18/433例),鼻咽頭炎3.5%(15/433例),疲労3.2%(14/433例),下痢,傾眠 各2.8%(12/433例),インフルエンザ2.5%(11/433例),尿路感染,発疹 各2.3%(10/433例),高血圧 2.1%(9/433例)であった。
  4. 海外第Ⅲ相試験(抗TNF製剤に効果不十分な患者)
    抗TNF製剤に効果不十分な関節リウマチ患者を対象に,本剤を承認された用量で投与した,DMARD併用下,プラセボ対照二重盲検比較試験(ATTAIN試験)における6ヵ月後のACR20を表5に示す。本剤投与群におけるACR20は,プラセボ群に比較して有意に高かった(p<0.001)。
    表5 ACR20(海外第Ⅲ相試験)
    ATTAIN試験
    本剤投与群
    プラセボ群
    ACR20a(%)
    50.4
    19.5
    改善例数/有効性評価例数
    129/256
    26/133
    プラセボ群との差
    [95%信頼区間]
    30.8
    [20.6, 41.1]
    -
    p値
    p<0.001b
    -
    a ACRコアセットのうち,総疼痛関節数及び総腫脹関節数がともに20%以上改善し,かつ残りの5項目中3項目が20%以上改善した症例の割合。
    b 投与開始前の抗TNF製剤の使用状況を共変量としたCochran-Mantel-Haenszelカイ二乗検定
    本剤投与群における副作用発現頻度は,41.5%(107/258例)であった。主な副作用は,頭痛8.1%(21/258例),浮動性めまい,悪心 各3.5%(9/258例),上気道感染,気管支炎,鼻咽頭炎 各2.3%(6/258例)であった。
〈多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎〉
  1. 国内第Ⅲ相試験
    メトトレキサート又は生物製剤に対して効果不十分又は不耐容の多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎患者(4~17歳)を対象注1)に,本剤を承認された用量で投与した非盲検試験における投与16週後のACR改善基準30%による有効率(ACR Pedi 30)は90.0%(18/20例)であった。
    副作用発現頻度は,30.0%(6/20例)であった。副作用の内訳は,胃腸炎,鼻咽頭炎,口腔カンジダ症,口腔ヘルペス,便秘,悪心,口内炎,低体温 各5.0%(1/20例)であった。
    注1)患者20例のベースライン時の年齢内訳は,5歳:1例,6~12歳未満:10例,12歳以上:9例
  2. 海外第Ⅲ相試験
    疾患修飾性抗リウマチ薬に対して効果不十分又は不耐容の多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎患者(6~17歳)を対象に,本剤を10mg/kg(ただし,体重100kg超は1gの固定用量)注2)で投与した非盲検導入期における投与16週後のACR Pedi 30は64.7%(123/190例)であった。
    また,非盲検導入期(16週)でACR Pedi 30に達した患者を対象とした二重盲検期において,プラセボ群(62例)に対する本剤投与群(60例)の再燃リスクのハザード比は0.31(95%信頼区間:0.16, 0.59)であり,本剤投与群はプラセボ群に比べて再燃までの期間が統計学的に有意に長かった(p=0.0002,log-rank検定)。
    二重盲検期における再燃までの期間のKaplan-Meier曲線
    非盲検導入期(投与開始後16週まで)における副作用発現頻度は,27.4%(52/190例)であった。主な副作用は,頭痛5.3%(10/190例),浮動性めまい2.6%(5/190例),悪心,副鼻腔炎 各2.1%(4/190例)であった。また,二重盲検期における本剤投与群の副作用発現頻度は,15.0%(9/60例)であった。副作用の内訳は,副鼻腔炎,上気道感染,鼻炎,細菌尿,インフルエンザ,外耳炎,癜風,頭痛,低血圧,悪心,腹痛,アフタ性口内炎,粃糠疹,皮膚病変,白血球尿 各1.7%(1/60例)であった。
    注2)本剤の承認用量は,10mg/kg(ただし,体重75kg以上100kg以下は750mg,100kg超は1gの固定用量)である。

薬効薬理

作用機序
アバタセプトは抗原提示細胞表面のCD80/CD86に結合することでCD28を介した共刺激シグナルを阻害する。その結果,関節リウマチの発症に関与するT細胞の活性化及びサイトカイン産生を抑制し,さらに他の免疫細胞の活性化あるいは関節中の結合組織細胞の活性化によるマトリックスメタロプロテアーゼ,炎症性メディエーターの産生を抑制すると考えられる。
T細胞活性化抑制作用
アバタセプトはin vitroにおいて抗原特異的なナイーブT細胞及びメモリーT細胞の増殖を減弱させ,IL-2,TNF-α及びIFN-γなどの炎症性サイトカインの産生を抑制した。また,コラーゲン誘発関節炎ラットにおいて,病態の進行,抗コラーゲン抗体の産生及び関節破壊を抑制した。

有効成分に関する理化学的知見

一般的名称
アバタセプト(遺伝子組換え)
Abatacept(Genetical Recombination)
本質
アバタセプトは遺伝子組換え融合タンパク質で,1〜125番目はヒト細胞傷害性Tリンパ球抗原−4,及び126〜358番目はヒトIgG1に由来する改変型Fc領域からなり,131,137,140及び149番目のアミノ酸残基がSerに置換されている。アバタセプトはチャイニーズハムスター卵巣細胞により産生される。アバタセプトは358個のアミノ酸残基からなるサブユニット2分子から構成される糖タンパク質(分子量:約92,000)である。

取扱い上の注意

外箱開封後は遮光して保存すること。

包装

1バイアル(調製専用シリンジ1個添付)

主要文献

1
社内資料:海外臨床試験における悪性腫瘍発現頻度
2
社内資料:日本人関節リウマチ患者における単回及び反復投与試験(2010年7月23日承認,CTD 2.7.2.2)
3
社内資料:日本人関節リウマチ患者における母集団薬物動態解析報告書(2010年7月23日承認,CTD 2.7.2.3.3.3)
4
社内資料:メトトレキサート又は生物学的製剤に対して効果不十分又は不耐容の若年性特発性関節炎患者を対象としたアバタセプト点滴静脈内投与時の有効性,安全性,薬物動態及び免疫原性を検討する多施設共同非盲検第3相試験(2018年2月23日承認,CTD 2.7.6.2)
5
社内資料:日本人若年性特発性関節炎患者における母集団薬物動態解析報告書(2018年2月23日承認,CTD 2.7.2.3.2)
6
社内資料:メトトレキサートに対して効果不十分な活動性関節リウマチ患者を対象としたabatacept2用量の静脈内投与による有効性及び安全性を検討する多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検用量反応試験(第II相臨床試験)(2010年7月23日承認,CTD 2.7.6.2.5)
7
Matsubara T, et al. :RMD Open. 2018;4:e000813
8
Kremer JM, et al. :Ann Intern Med. 2006;144(12): 865-876
9
Genovese MC, et al. :N Engl J Med. 2005;353(11) :1114-1123
10
Ruperto N, et al. :Lancet. 2008;372:383-391
11
社内資料:CD4陽性T細胞に対するアバタセプトの作用(in vitro)(2010年7月23日承認,CTD 2.6.2.2.1.3.2)
12
社内資料:コラーゲン誘発関節炎モデルに対するアバタセプトの作用(in vivo)(2010年7月23日承認,CTD 2.6.2.2.1.3.4)

文献請求先及び問い合わせ先

ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社 メディカル情報グループ
(住所)東京都千代田区大手町1-2-1
(TEL)0120-093-507
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プロモーション提携
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先発薬

後発薬

                                                                                                                                                                                                       

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